2017年12月10日日曜日

転職であまり活用されない3つ目のネットワークとは?

三つのネットワーク

これまでの議論は、冒頭でキャリアシフトに必要な3つの資産についてお話ししましたが、

そのうちの二つ、
自己認識(古いペルソナと新しいペルソナの和解、自分なりの物語をつくるetc)、
新しい経験へのオープンマインド(仕事を辞める覚悟や新しい行動とスモールWINを生み出す行動etc)が中心でした。
今回は、多様なネットワークについて、
キャリアシフトでどう使って行ったら良いかをお話しします。

日本国内では、転職というと今まで話して来たように、
どこかの転職サイトに登録してエージェントを通して活動するか、
転職サイトの募集に応募して書類選考を待つというパターンが主流だとおもいます。

転職とネットワーク活用について長年研究されている上智大学の渡辺教授によると、
転職に利用するネットワークは、大きく分けて3種類あるといいます。

1)フォーマルな方法(転職エージェントや転職サイト、職業安定所)
2)直接応募(企業の採用情報)
3)人的つながり

上から順に私たちが利用する頻度の高いネットワークなのですが、
ここで焦点をあてたいのは、最後の人的つながりです。

人的つながりを考えた時に、

つながりの強さで「弱いつながり群」と「強いつながり群」とに分けられます。
変革資産の一つ「多様なネットワーク」を意識して作っていくことが、
どのようなビジネス展開でも重要な活動であることは、昔から言われています。

Never Eat Alone(独りでごはんを食べないこと)」の著者キース・フェラジーは、

ネットワーキングするのにランチやディナーに誘うのは、
フォーマルなミィーティングよりも効果的で、
忙しい役員クラスの方々との格好の交流機会なので、
独りで食事せずにどんどん会いたい人を誘いましょうといっているのですが、
その中でも「弱いつながり群(weak ties)」が
ビジネスの紹介や人材募集に役立っていると指摘しています。

これは、アメリカでの事例ですが、
実は転職時に収入が高い、または、望んだ職につけた方々のリソースとなったネットワークの上位に
この人的つながりにおける「弱いつながり群」が挙げられています。

段稀にしか合わない人々からもたらされる情報は、

自身が所属する強いつながり(親族や仕事関連のつながり)で
得ている情報とは異なっているため、転職可能性が広がると同時に、
弱いつながりである知り合いが橋渡しをしてくれるため、
採用される確率も高くなるということです。

日本での転職とネットワーク活用

渡辺教授によると、
日本では20年前くらいまでは、
人的つながりによる転職率が男性労働者に限りですが、54%も占めており、
そのなかでも強いつながり群からの転職が多かったようです。

しかし、その後フォーマルな転職市場の拡大もあり、

人的つながりを使って転職活動をする方は2割程度に縮小しており、
強いつながり群を利用するより、弱いつながり群を利用する方々が多くなっているようです。

その理由の一つとして、

組織の高いポジションにいる方々は、
強いつながり群から同じようなポジションを探すことで収入のより高い、
または、やりがいのある仕事を探すのは効果的ですが、
私たちのような普通のサラリーマンにとってはこのようなメリットはないため、
強いつながり群を利用していないからのようです。

渡辺教授によると、

多くの異なる他者との関係を取り結ぶ「開放型」ネットワークを保持する労働者が望ましい転職結果を得る可能性が高くなると考えられる

と述べています。

私の転職とネットワークの関係

実は、私の転職活動でも
この「人的つながり」における弱いつながり群に支援された経験があります。

現在、再生可能エネルギー事業の営業企画のポジションという

当初予測していなかったキャリアシフトができたのも、
仕事以外のネットワークで知り合った方が、
たまたま転職サイトから面談オファーをいただいた企業の
重要なポストに付いていらっしゃったからです。
その方との出会いは、7年前でしたし、
以降一度もお会いすることはなかったのですが、
お会いするきっかけがテレビ局の取材という特別なイベントでしたので、
向こうも覚えていてくれました。

たまたまその企業が募集されていたのは

前線の営業職でしたが、
募集していたポジションにこだわることなく、
何度か面接の機会をいただきました。
現在私が望んでいること、持っているスキルや知識について、
採用担当者からもご考慮いただき、
異なった部署の責任者と面談させていただきました。

4回の面接を経て

最終的に今のポジションならもう少し私のやりたいことが実現できそうだ、
とおもい受けさせていただくことにしたのです。


ここまで読まれた皆さんは、
なぜ人材教育や組織開発系の仕事へ
シフトしていないのかとおもわれるかもしれません。
しかしここがミソで、営業企画というのは、企業の組織全体をみて、
既存製品&サービスの販売促進や新製品&サービスの開発の手伝い、
プロモーションとブランディングを手がけるという
組織レベルで舵取りの一部を担う部署になります。

前職のように一部署内の仕事ではないですし、

ブランディングを行うには、外へ向けてのプロモーションのほかに
組織の内側への働きかけも必要です。
立場として人事部門と連携することもありますし、
各事業を跨いでの仕事も舞い込んでくるので、
そのなかで研修コンテンツや体制についての提案をすることも
やろうとおもえばできるはずです。

同時に私の専門だった住宅産業の知識が、
再生可能エネルギーの分野でも一部で使えるので、
医療ですとか車などのように全く関連性のない産業へ
シフトするよりも無理なく移行できるという利点もあります。

そのほか、収入面やロケーションなど考慮したい要件もありましたが、

以前から省エネやサステイナビリティ(持続可能な社会)については、
建築の分野でも私自身のサブテーマとして追いかけていたことですので、
今まで語って来た古いペルソナと和解すること、
他者への貢献という思いで仕事をする、
大きなチェンジよりスモールWINを目指す
などの指標がストンとハマるようなポジションでしたので、
ここで新しい一歩を踏み出す決心をしました。

多様なネットワークを育む


私の転職体験がすべての方々に当てはまるかといえばそうではないとおもいますが、
ここでお伝えしたいのは、ライフシフトのグラットン教授がいうように
「多様なネットワーク」は、キャリアシフトを行う時の
有効な変革資産になるということです。

しかし、いざ転職活動をおこおうとした時に、

さあ多様なネットワークをつくろうといっても
短時間で簡単にできるようなことではありません。

ですから、ここでのアドバイスは、30代、40代の普通のサラリーマンは、
これからのキャリアシフトを見据えて、仕事以外での弱いつながり群も
意識したネットワークづくりをしたらどうでしょうかということです。

おそらく皆さんも趣味や関心ごとによってもうすでにネットワークがあるのかもしれません。


興味深いのは、このようなネットワークでやり取りする人間関係は、
常に利害が伴うビジネスでの関係と異なり、
お互いに信頼や楽しさを共有できる関係ですので、
自己効力感も増しますので、人生そのものも豊かにしてくれます。

グラットンのいう変革資産は、何もキャリアシフトだけに必要な資産ということではなく、

自身の精神的成長に欠かせないIntangible Assets(目に見えない資産)という意味で
焦点をあてています。

転職活動は、そのなかでほんの一部分に過ぎませんが、

いざキャリアをシフトしたいと思い立って行動に移した時に、
この人的つながりというのを見落としがちですが、
その時にあるのとないのとでは、その後の人生に大きく影響することが多分にあるということです。

前著「40からのMBA留学」でも述べましたが、
わざわざ多額の費用をかけて海外に暮らし、授業を受けに行くというのは、
「学ぶ」ということ以外に他業種の、しかも世界のビジネスパーソンと交流するという視点いえば、
変革資産を増やしに行く=人生をさらに豊かにしにいくということです。
MBAは無駄だという議論をする方々は、この見えない資産について数値化できないため、
数値化できるような単純な話しかできないのです。

多様なネットワークを意識してつくりましょうという話だけでは、
取り留めのない話ですので、ここではもう一歩踏み込んで、
MBAホルダーとして、40代のプロフェッショナルとして
どう構築していくかの提案をしたいとおもいます。

ひとつは、LinkedIn(リンクトイン)の活用です。

日本ではFacebookのほうが有名でこちらをビジネスにも利用している方もいらっしゃるようですが、

世界レベルでみたときにはLinkedInのほうがビジネスに近いネットワークといえます。
プロフェッショナルのSNSと言われているだけあって、
日本以外の方とゆるいネットワークを構築しする場合には利用しやすいSNSといえます。
自分の携わる産業の情報やビジネスに関する自分なりの考えなどを
プレゼンするブログ投稿の場もあります。

プロフィールは英語で書いた方がよいでしょう。

外資系の日本法人などが採用のために使うこともありますので、
こちらでのプレゼンスをあげることは、
自分自身のプロフェッショナルとしてのブランドを高めることにつながるでしょう。

もうひとつは、自分の関心ごとに沿ったイベントに参加したり、
協会などの仕事にボランティアで積極的に参加してみることです。
現在私は、国際コーチング連盟(ICF)の会員として登録しています。
ICFには日本支部があり、そちらでは運営委員として立候補させていただきました。
コーチングは、これからやっていきたい仕事であり、
大きな要ですから、今まで交わりのなかった方々とのつながりを
作る意味でも非常に重要な場所だと考えています。

その他にもMBAを取得したおかげで、
MBA友の会(これからMBA を目指す方々も参加可能)という集まりにも参加させていただき、
他業種の方々と交わる機会を得ましたし、
このブログを通してお知り合いになった方々も私にとっては大切なつながりです。

結局のところ、変革資産として「利用する」という感覚で
このネットワーキングするのは間違いで、
まずは、ギブ(貢献する)することで自分も満足できる関係があると
さらに人生が豊かになるという本質(=人はSocial Amimalである)を
理解することが大切なのだとおもいます。

最後のアドバイスになりますが、
キャリアシフトを決心して転職活動を始めたり、
仕事を辞めたりしたタイミングでは、
「そういえばあの人は元気でやっているかな?」
という方々を一度思い浮かべてみるのはいかがでしょうか。

仕事が忙しくて会っていない方が少なくとも何人かいらっしゃるはずです。
そんな方に「お久しぶりです」と声をかけてみるのはいかがでしょうか。
思いもよらない新しい出会いがあるかもしれませんよ。
出会いは偶然ではなく、必然ですから。




参考文献

渡辺深 (2015), 転職とネットワーク. 学術の動向20(9), 9_20-9_25.