2017年12月21日木曜日

”MBA Lounge”の 川尻秀道さんに聴くキャリアシフト

今回は、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のMBAを取得された
川尻さんにMBA後のキャリアについてインタビューしました。

川尻さんは、MBA取得後台湾勤務を経て2014年に独立、
MBA Loungeとアジアビジネスコンサルティング、
中国語教室運営を行うなど、精力的な起業家です。

<対談>
■MBAを目指したきっかけは何ですか?

MBA留学をしたいと思ったきっかけは2つあります。
ひとつは、住宅メーカーの建材仕入れの仕事をしていたのですが、
取引する商社の方々が皆さん当然のごとく英語ができる、
世界を相手にしている、財務諸表も皆さんわかるし、
そういう「世界を股にかけて」活躍する方々をみていて、
自分もそうなりたいと思っていました。
仕事の関係で、初めは建築か土木系で留学かなと思っていましたが、
専門性を絞らず、経営すべてを学ぶマルチなところでMBAかなと思いました。
また、そのときの会社の社長が、アメリカの大学へ留学後、フィンランドへ渡り、
何もない所から起業した方で、そういう話を聞いていると、自分も社長のような
生き抜く力みたいなものを身につけたいとおもいました。

二つ目は英語を上達させたかったので、海外に住みたかったからです(笑)
オーストラリアへの留学を決めたのは、22のときにワーホリで行ったのが
きっかけでした。


■2007年(28歳)から1.5年でQUTのMBAに行かれたわけですが、
 行く前は取得後のキャリアパスをどのように考えていましたか?

世界を股にかけるような海外出張に行ったりする仕事をしたいと思っていました。
産業にはこだわらない、コンサル会社のイメージです。

■勤めていた会社は、辞めて留学されましたか?

辞めるつもりでしたが、親族が経営する会社で、引き留められました。
無下に断ることもできず、形だけ籍を置く形で仕事から離れました。
最終的には、会社自体がなくなったので、辞めるのと同じ状態になったのですが、
それでも籍があったので金銭的に多少の違いはありました。

■なるほど。私も嬉しいことに引き留められて、休職扱いで留学したのですが失敗しました(笑)これからは、理解のある企業も出てくると思います。休職という選択肢も増えると思いますが、これからMBAを目指す方々にこのあたりでアドバイスはありますか?

会社も仕事も好きだったら、残ってもいいと思います。
変な話、私費留学なら大きな持ち出しとなるので、迷っているなら残って、
利用できるものは利用するという現実主義でもいいと思います。
辞めたいときには、MBA後に辞めればいいですし。
ただ、全く戻る気がないのなら、引き留められてもやめた方がいいと思います。

■同感です。戻る気ないのなら行く前にスッキリしたほうが、
 次のアクションを真剣に考えられますし。
 留学中は何か就職活動など積極的に行いましたか?

特に日本で仕事を探すつもりはなかったので、就職エージェントなどに
アプローチかけたりはしませんでした。
ただ、カリキュラムが終わる頃に残金100万円ありまして、これを使って
Master of Marketingを取ってダブルメジャーにするか、
台湾に行って語学学校に入り、中国語の勉強をしながら仕事を探すかで悩んでいました。

実は、オーストラリアにいる間に学校が休みの期間があったのですが、
そのときに短期で台湾に行きました。その時の体験で衝撃を受けて、
ぜひまた訪れたいと心に決めていました。
ですので、最終的にはMBA取得後に、台湾に渡るほうを選択しました。

■日本で仕事をしないという目標は達成できましたね(笑)
 台湾の語学学校に入って勉強しながら、国内で仕事を探したのですか?

はい。MBAをやって、会社の運用に興味を持ちました。
コースでは、仮想コンサルティングとしてのケーススタディを数多くやったので、
どんな産業でもいいので事業運営にかかわる仕事、戦略立案やマーケティングを
やりたいと思いました。

■台湾での就活はどのように行ったのですか?

語学学校に通いながら、同時進行で就活していました。
パソナなどの就職エージェントに登録して台湾の
日系現地法人などの面接も受けましたが、
仕事の内容ががっちり決まったポジションで、あまり魅力を感じませんでした。
そんななか、オーストラリアで知り合った人の紹介で
某家具メーカーが日本進出を考えているので、
事業責任者をやってみないかという話をいただき、喜んで受けさせていただきました。



■正規の就職エージェントなどの募集からではなく、ご自身のネットワークからの紹介で仕事を見つけられたというのは、興味深い話ですね。どのような仕事でしたか?

100%台湾人の会社で、新しく日本へ進出したいということで、
全く何もない所からのスタートでした。事業計画を立てて、
どのように展開していくかを考えて実行するという、
全く0からの事業に携われたことは、本当にラッキーでした。
MBAで学んだことをフル稼働させて、挑戦した感じです。
ですが、その後、突然日本進出を中止することになり、
ビザ更新ができなくなったので、あらためて次の仕事を探すことになりました。
2010年(32歳)のことです。

■台湾の会社で学んだことは?

まず、自分主導でなにかを行うというのは向いているなということです。
もう一つは、MBAで習ったことを方端からやってみましたが、
やはり「そのまんま」でやっても駄目だということに気づかされました。
言葉や文化の違いなど人間関係などソフト面も非常に重要だと学びました。

■で、その後はどうされたのですか?

実は台湾で今の奥さんと出逢い、結婚していましたので、
ある程度の収入がまず必要でした。
ひとりなら他の選択肢も考えたと思いますが、日本に戻ることにしました。
この時は、相性の良い転職エージェントとの出会いがあり、
4社ほど面接して、そのうちの1社に決まりました。

今回も特にどの産業とはこだわっていなくて、
海外に関わる仕事として機械部品の調達や美容機器メーカーなどの面接もうけました。
最終的に農産物関係の海外事業部にお世話になることになりました。
こちらは100%海外の顧客ですし、海外出張もあり、MBAを目指したころからの
「世界を股にかける仕事」という点では、最も適していました。

■日本に帰ってきて4年くらいで、自ら起業されたわけですよね。きっかけは?

やはり大きなグループ会社の子会社で、上司などをみていると、
「自分の20年後がこれか」と思うと、なんとなく嫌だなと思うようになり、
台湾で新規事業に関わっていた頃の楽しさが忘れられなかったからです。

新卒で入った時の会社の社長が、私の親族でしたので彼の背中をみていましたし、
経営者のDNAが自分のなかにもあると感じていましたので、
ここであらためて自らのビジネスをやりたいと思いました。
起業については、最初からでっかくビジネスをやることは考えてなかったので、
まず考えたのは自分が今できることは何かということでした。

そこで、3つのビジネスを同時に立ち上げました。
MBAを目指す方々のサポートとしてMBA Lounge
台湾人の妻がいるので、中国語会話の教室
そして、台湾での新規事業立ち上げにかかわった経験から、
台湾へのビジネス進出コンサルティングという3つのビジネスです。

■職種も違うし、個人事業主になられたわけですが、会社員からキャリアをシフトするのに何か苦労はありましたか?

精神的には苦労はありません。
やりたいことをやっているのでむしろ楽しいです。
MBAなら市場調査して、どのように売るかとか戦略立案してから
実行みたいなところがありますが、そんな資金もないですし、
まずはやってみて儲からなければやめればいいと思って小さくスタートさせました。

やりながらマーケティング調査もやっている感じです。
やりたくない仕事を我慢して会社員としてやることはどういうことか十分わかったので、
あとはやりたい仕事をやりたいと思いました。

■やりたくないことを頑張っても、人生楽しくないですからね。
 MBAを目指す方々に取得後のキャリアについてのアドバイスをするとしたら?

MBA出願時に、自分は学んだことをその後どう活かしていきたいかのエッセイを
書かなければならないので、その時にシナリオを考えるかとおもいますが、
これは自己分析をするいい機会だと思います。

ただ、それはそれとして、行ってからからまた考えればいいのだと思います。
行けばいろんな人と会いますし、考えも変わってくると思います。
迷ったら、自分の好きな方を選ぶ。決して前と同じ環境には戻らないことです。


■ありがとうございます。最後にベタな質問をさせてください。
 MBAは、結局のところ役に立ちましたか?

もちろん役に立っています。

だって、MBAをやっていなかったら、
MBA Loungeはできなかったのですから。

MBAでは、自己流ではなくて世間で正しいと
言われているやり方を知ることができます。

そこを知ることで、教科書通りのやり方と
そうではないやり方の両方を検証できますので、
やはり広い視野でビジネスを考えることが出来ると思います。
MBAをやれば、考え方が変わります。
人との付き合い方も変わります。
そして、人生を変えます。

■本日は、非常に興味深いお話をありがとうございました!

2017年12月10日日曜日

転職であまり活用されない3つ目のネットワークとは?

三つのネットワーク

これまでの議論は、冒頭でキャリアシフトに必要な3つの資産についてお話ししましたが、

そのうちの二つ、
自己認識(古いペルソナと新しいペルソナの和解、自分なりの物語をつくるetc)、
新しい経験へのオープンマインド(仕事を辞める覚悟や新しい行動とスモールWINを生み出す行動etc)が中心でした。
今回は、多様なネットワークについて、
キャリアシフトでどう使って行ったら良いかをお話しします。

日本国内では、転職というと今まで話して来たように、
どこかの転職サイトに登録してエージェントを通して活動するか、
転職サイトの募集に応募して書類選考を待つというパターンが主流だとおもいます。

転職とネットワーク活用について長年研究されている上智大学の渡辺教授によると、
転職に利用するネットワークは、大きく分けて3種類あるといいます。

1)フォーマルな方法(転職エージェントや転職サイト、職業安定所)
2)直接応募(企業の採用情報)
3)人的つながり

上から順に私たちが利用する頻度の高いネットワークなのですが、
ここで焦点をあてたいのは、最後の人的つながりです。

人的つながりを考えた時に、

つながりの強さで「弱いつながり群」と「強いつながり群」とに分けられます。
変革資産の一つ「多様なネットワーク」を意識して作っていくことが、
どのようなビジネス展開でも重要な活動であることは、昔から言われています。

Never Eat Alone(独りでごはんを食べないこと)」の著者キース・フェラジーは、

ネットワーキングするのにランチやディナーに誘うのは、
フォーマルなミィーティングよりも効果的で、
忙しい役員クラスの方々との格好の交流機会なので、
独りで食事せずにどんどん会いたい人を誘いましょうといっているのですが、
その中でも「弱いつながり群(weak ties)」が
ビジネスの紹介や人材募集に役立っていると指摘しています。

これは、アメリカでの事例ですが、
実は転職時に収入が高い、または、望んだ職につけた方々のリソースとなったネットワークの上位に
この人的つながりにおける「弱いつながり群」が挙げられています。

段稀にしか合わない人々からもたらされる情報は、

自身が所属する強いつながり(親族や仕事関連のつながり)で
得ている情報とは異なっているため、転職可能性が広がると同時に、
弱いつながりである知り合いが橋渡しをしてくれるため、
採用される確率も高くなるということです。

日本での転職とネットワーク活用

渡辺教授によると、
日本では20年前くらいまでは、
人的つながりによる転職率が男性労働者に限りですが、54%も占めており、
そのなかでも強いつながり群からの転職が多かったようです。

しかし、その後フォーマルな転職市場の拡大もあり、

人的つながりを使って転職活動をする方は2割程度に縮小しており、
強いつながり群を利用するより、弱いつながり群を利用する方々が多くなっているようです。

その理由の一つとして、

組織の高いポジションにいる方々は、
強いつながり群から同じようなポジションを探すことで収入のより高い、
または、やりがいのある仕事を探すのは効果的ですが、
私たちのような普通のサラリーマンにとってはこのようなメリットはないため、
強いつながり群を利用していないからのようです。

渡辺教授によると、

多くの異なる他者との関係を取り結ぶ「開放型」ネットワークを保持する労働者が望ましい転職結果を得る可能性が高くなると考えられる

と述べています。

私の転職とネットワークの関係

実は、私の転職活動でも
この「人的つながり」における弱いつながり群に支援された経験があります。

現在、再生可能エネルギー事業の営業企画のポジションという

当初予測していなかったキャリアシフトができたのも、
仕事以外のネットワークで知り合った方が、
たまたま転職サイトから面談オファーをいただいた企業の
重要なポストに付いていらっしゃったからです。
その方との出会いは、7年前でしたし、
以降一度もお会いすることはなかったのですが、
お会いするきっかけがテレビ局の取材という特別なイベントでしたので、
向こうも覚えていてくれました。

たまたまその企業が募集されていたのは

前線の営業職でしたが、
募集していたポジションにこだわることなく、
何度か面接の機会をいただきました。
現在私が望んでいること、持っているスキルや知識について、
採用担当者からもご考慮いただき、
異なった部署の責任者と面談させていただきました。

4回の面接を経て

最終的に今のポジションならもう少し私のやりたいことが実現できそうだ、
とおもい受けさせていただくことにしたのです。


ここまで読まれた皆さんは、
なぜ人材教育や組織開発系の仕事へ
シフトしていないのかとおもわれるかもしれません。
しかしここがミソで、営業企画というのは、企業の組織全体をみて、
既存製品&サービスの販売促進や新製品&サービスの開発の手伝い、
プロモーションとブランディングを手がけるという
組織レベルで舵取りの一部を担う部署になります。

前職のように一部署内の仕事ではないですし、

ブランディングを行うには、外へ向けてのプロモーションのほかに
組織の内側への働きかけも必要です。
立場として人事部門と連携することもありますし、
各事業を跨いでの仕事も舞い込んでくるので、
そのなかで研修コンテンツや体制についての提案をすることも
やろうとおもえばできるはずです。

同時に私の専門だった住宅産業の知識が、
再生可能エネルギーの分野でも一部で使えるので、
医療ですとか車などのように全く関連性のない産業へ
シフトするよりも無理なく移行できるという利点もあります。

そのほか、収入面やロケーションなど考慮したい要件もありましたが、

以前から省エネやサステイナビリティ(持続可能な社会)については、
建築の分野でも私自身のサブテーマとして追いかけていたことですので、
今まで語って来た古いペルソナと和解すること、
他者への貢献という思いで仕事をする、
大きなチェンジよりスモールWINを目指す
などの指標がストンとハマるようなポジションでしたので、
ここで新しい一歩を踏み出す決心をしました。

多様なネットワークを育む


私の転職体験がすべての方々に当てはまるかといえばそうではないとおもいますが、
ここでお伝えしたいのは、ライフシフトのグラットン教授がいうように
「多様なネットワーク」は、キャリアシフトを行う時の
有効な変革資産になるということです。

しかし、いざ転職活動をおこおうとした時に、

さあ多様なネットワークをつくろうといっても
短時間で簡単にできるようなことではありません。

ですから、ここでのアドバイスは、30代、40代の普通のサラリーマンは、
これからのキャリアシフトを見据えて、仕事以外での弱いつながり群も
意識したネットワークづくりをしたらどうでしょうかということです。

おそらく皆さんも趣味や関心ごとによってもうすでにネットワークがあるのかもしれません。


興味深いのは、このようなネットワークでやり取りする人間関係は、
常に利害が伴うビジネスでの関係と異なり、
お互いに信頼や楽しさを共有できる関係ですので、
自己効力感も増しますので、人生そのものも豊かにしてくれます。

グラットンのいう変革資産は、何もキャリアシフトだけに必要な資産ということではなく、

自身の精神的成長に欠かせないIntangible Assets(目に見えない資産)という意味で
焦点をあてています。

転職活動は、そのなかでほんの一部分に過ぎませんが、

いざキャリアをシフトしたいと思い立って行動に移した時に、
この人的つながりというのを見落としがちですが、
その時にあるのとないのとでは、その後の人生に大きく影響することが多分にあるということです。

前著「40からのMBA留学」でも述べましたが、
わざわざ多額の費用をかけて海外に暮らし、授業を受けに行くというのは、
「学ぶ」ということ以外に他業種の、しかも世界のビジネスパーソンと交流するという視点いえば、
変革資産を増やしに行く=人生をさらに豊かにしにいくということです。
MBAは無駄だという議論をする方々は、この見えない資産について数値化できないため、
数値化できるような単純な話しかできないのです。

多様なネットワークを意識してつくりましょうという話だけでは、
取り留めのない話ですので、ここではもう一歩踏み込んで、
MBAホルダーとして、40代のプロフェッショナルとして
どう構築していくかの提案をしたいとおもいます。

ひとつは、LinkedIn(リンクトイン)の活用です。

日本ではFacebookのほうが有名でこちらをビジネスにも利用している方もいらっしゃるようですが、

世界レベルでみたときにはLinkedInのほうがビジネスに近いネットワークといえます。
プロフェッショナルのSNSと言われているだけあって、
日本以外の方とゆるいネットワークを構築しする場合には利用しやすいSNSといえます。
自分の携わる産業の情報やビジネスに関する自分なりの考えなどを
プレゼンするブログ投稿の場もあります。

プロフィールは英語で書いた方がよいでしょう。

外資系の日本法人などが採用のために使うこともありますので、
こちらでのプレゼンスをあげることは、
自分自身のプロフェッショナルとしてのブランドを高めることにつながるでしょう。

もうひとつは、自分の関心ごとに沿ったイベントに参加したり、
協会などの仕事にボランティアで積極的に参加してみることです。
現在私は、国際コーチング連盟(ICF)の会員として登録しています。
ICFには日本支部があり、そちらでは運営委員として立候補させていただきました。
コーチングは、これからやっていきたい仕事であり、
大きな要ですから、今まで交わりのなかった方々とのつながりを
作る意味でも非常に重要な場所だと考えています。

その他にもMBAを取得したおかげで、
MBA友の会(これからMBA を目指す方々も参加可能)という集まりにも参加させていただき、
他業種の方々と交わる機会を得ましたし、
このブログを通してお知り合いになった方々も私にとっては大切なつながりです。

結局のところ、変革資産として「利用する」という感覚で
このネットワーキングするのは間違いで、
まずは、ギブ(貢献する)することで自分も満足できる関係があると
さらに人生が豊かになるという本質(=人はSocial Amimalである)を
理解することが大切なのだとおもいます。

最後のアドバイスになりますが、
キャリアシフトを決心して転職活動を始めたり、
仕事を辞めたりしたタイミングでは、
「そういえばあの人は元気でやっているかな?」
という方々を一度思い浮かべてみるのはいかがでしょうか。

仕事が忙しくて会っていない方が少なくとも何人かいらっしゃるはずです。
そんな方に「お久しぶりです」と声をかけてみるのはいかがでしょうか。
思いもよらない新しい出会いがあるかもしれませんよ。
出会いは偶然ではなく、必然ですから。




参考文献

渡辺深 (2015), 転職とネットワーク. 学術の動向20(9), 9_20-9_25.







2017年12月4日月曜日

自分のキャリアシフトに適したポジションの見分け方

面談についての失敗

新しいキャリアへシフトする場合には
必ず通らなければならない道ですが、
私もいろいろな職種にアプライして、
不採用をいただいてきました。
そのなかでも非常に興味深い体験についてシェアします。

フリースクールの高校教師の職にアプライしたときの経験です。

社会経験豊富な教師陣が自由なカリキュラムを組んでいる学校法人で、
教師免許や経験を問わないということだったので応募しました。
こちらの面談スタイルは、集団面接のスタイルでした。

集合説明会のあと、何人かで面接を受けるという流れでした。
自分でもお恥ずかしい限りですが、
今までの人生の中で一番緊張しました(苦笑)。
背筋を伸ばしていると、背中の筋肉が緊張に耐えられなくて、
ガクガク・ヒクヒクするくらいにです。

志望動機と教師として何ができるかを
簡単に話してくださいという質問に、
私以外の候補者から順番に答えていくのですが、
皆さん私より若い方々なのに、
スラスラとプロのスピーチのように答えているので、
怖気づいてしまいました。

あまり気負わずにナチュラルな自分を表現すれば
良いくらいにしか思ってなかったのです。
面談で何を聞かれるかを考えもせずに本番を迎え、
事前対策済みの競合候補者にノックアウトされてしまいました。
私の番が回ってきた時には、話す声は上ずっているは、
背中は震えてガクガクしているはで、
文字通り「変なオジサンがカクカクしている」状態でした。

この話を帰って妻にしたら、大笑いされました。
教訓としては、この会社でどのような働き方をしたいか
イメージのないまま面談に行ってはいけないということです。
なんとなく自分のキャリアシフトの物語に関連があるかな
くらいの気持ちで応募したのが悪かったのだと思います。

これこそ「天職」だとおもって臨んでいる候補者とは、
やはりこんなに差がでるのだなと気づかされた一日でした。
それでも、集団説明会や集団面接は、一度受けてみるといいとおもいます。

というのも、他の転職希望者がどのようなストーリーを語っているかを
聴くことができるからです。
特に今回の高校教師の場合は、塾講師だったり、企業の教育担当者だったり
何かしら「教育」に携わっている方々の話が聴けたので、
自分の物語と比較ができて勉強になりました。


キャリアシフトに適したポジションとそうではないポジション

こういった集団面接が行われるような説明会に行くと、
40代というのはやはりあまりいないのが事実です。
よく考えてみると、20代後半、30代は、
自分が何になりたいかで動いていたようにおもうのです。
若者を一括りで語るのも、それ以外の方も必ずいるので
大雑把な言い方になりますが、パターンはあります。

社会での経験学習論で広く活躍されている松尾教授によると、
仕事におけるプロフェッショナルの条件として、
「自分への思い」と他者へ貢献することを使命と感じる
「他者への思い」の両方を兼ね備えていることだと定義づけたうえで、
次のように語っています。

若いうちは「認められたい、力をつけたい」という自分への思いが強いのに対し、他者への思いは弱いケースが多くみられます。しかし、経験を積むに従い、優れた人ほど、顧客や社会のために働きたいという「他者への思い」が強くなり、「自分への思い」と融合していく傾向にあります。

松尾教授のいうキャリアとしての「精神的成長」とは、
仕事に対する考え方、在り方が自己中心的なものから、
「他者や社会とのつながりを意識したもの」へ変化していくとのことですが、
私の感覚では、肩書きとして何になるかというキャリアより、
社会のなかでどう貢献したいか、次の世代に何を伝えたいかのほうが
キャリアとして重視したい部分でしたので、
「高校教師」という職業はリーダーシップや能力開発を広める
コーチングを行うための手段であって、天職という感覚はありませんでした。

色々な産業、職種にアプライしていく中で、
振り返ってみてあらためて思うのは、
社会、あるいは現在の人びとが抱える課題に対して取り組みたい、
解決したいと思う場合には、
もうすでに仕事の範囲や要件ががっちり決まっているポジションには
応募しない方が良いのかもしれません。

これは後になって気づいたのですが、採用側が求める人材には
大きくわけて2種類あることです(黒田, 2017)。

ひとつは、決まった業務に対して年齢、職歴、資格保持、転職回数などの基準が
社内で既に設けられているなかでの人材。

もう一つは、その組織がかかえる課題を解決するために獲得したい人材。

世に出ている募集は、圧倒的に前者ですが、
私たちキャリアシフトを考える40代、
さらにMBAホルダーが活かされるポジションは、
どちらかというと後者だということです。

まとめて分類すると次のようになります。

①業務固定型ポジション
・20代、30代前半、「自分への思い」中心の方向け。
・採用側:増員or欠員のための募集。
・多くのポジションがこちら。

②課題解決型ポジション
・40代前後(or40代以上)他社貢献へシフトしたい方向け。
・採用側:新事業や変革など現状の課題を解決するための人材発掘。
・出現率は低いが、年齢や経験にとらわれない柔軟な採用志向を持つ企業の場合が多い。

キャリアシフト活動中は、①、②を区別せずに応募していましたが、
断然②を中心に攻めたほうが、自分の古いペルソナと新しいペルソナが
和解できるベストなスペースが見つかるのではないでしょうか。





参考文献

松尾睦 (2011), 職場が生きる人が育つ 「経験学習」 入門, ダイヤモンド社.

黒田真行 (2017), “次世代リーダーの転職学: 40歳を過ぎても「企業が欲しがる人材」3つの共通点,” NIKKEI STYLE, 7th April.