2017年11月10日金曜日

企業の虚構と個としてのキャリア

人間の大規模な協力体制は何であれ 、人々の集合的想像の中にのみ存在する
共通の神話に根差している 。
ユヴァル・ノア・ハラリ. (2016). 
企業というフィクションにどう向き合うか

オバマ前大統領のオススメの著書ということで、
我々ホモ・サピエンスの約7万年の歴史を紐解いた
壮大な物語の中で、なぜ企業という組織が成り立っているのか
という話が面白かったので、初めにご紹介します。

それは、認知革命として、現実には存在しない絆や神などを
想像する力を手にしたからだということで、
一番わかりやすいのは、お金です。
単なる紙切れ1枚ですが、相手も価値があると認識していれば、
物やサービスを交換する媒介になります。
それと同じで、企業もビジョンやミッションという
神話を信じる社員たちによって協力体制ができているといえます。

ですが、共同体意識とは、現実のものではないので、
言ってみれば虚構(フィクション)ですね、というのがオチになります。
その虚構を信じるものが、社員なのでしょうし、
少しでも疑ってしまえば、離れるしかないというのも
こうやって人類を俯瞰した見方をすれば、
至極当たり前のことなのかもしれません。

陳腐化した神話を信じ続けたい人と新しい神話を創造したい人たちが
せめぎあっているのが、今の時代です。
認知を超えたメタ認知革命が、個々人の人生のあり方、幸福感に
焦点を当て始めているので、その大きな部分であるキャリアでも、
企業がつくりあげた虚構とどう折り合いをつけていくかが、
無視できない課題となっているではないでしょうか。

大きなギャップ

MBA留学から帰ってきて、
復職してから3ヶ月でもともといた会社の神話を見限って、
転職活動を始めたわけですが、
ここであらたな壁にぶち当たりました。

私としては、今までの古い自己像を引きずった仕事に
魅力を感じないということがやってみてよくわかったのですが、
それなら何がやりたいのかと言った時に、
明確な答えが出せないところで焦りを感じました。

オーストラリアで出会ったビジネスコーチングを専門としてやってゆきたい。
そう思っても、まわりのネットワークも経験も何もないわけですから、
じゃあ会社を辞めて、コーチングをやりますというのは、
リスクが高すぎるのかなと感じていました。

ここで、立派な起業家たちは、武勇伝を語るのでしょうが、
私たち「普通のサラリーマン」としては、
「はい、はい、よかったね」でしょうし、
真似できない人たちの話を聴いても、あまり参考にならない気がします。

今までお話ししてきたように、新しい自己像を確立するためのリソース、
すなわちそれを支援してくれるような人間関係、コミュニティを築けてないうちから、
自分一人だけが新しい自己像、新しいキャリアにシフトしたくても、
まわりがそれを簡単には認めてくれません。

まさにイバラ教授が指摘するOld Self とPossible selfの狭間で
右往左往しているような心理状態でした。

仕事以外の多様なネットワーキング

それでも彼女のアドバイス通りにとりあえずやってみるかということで、
特に「仕事だけに焦点をあてない。新しいキャリアを支えてくれる人間関係もつくる」
とか「自分なりの物語をつくろう(なぜ変わるのかの動機を明らかにする)」などを
意識するようにしました。

実は、新しいキャリアを支えてくれる人間関係もつくろうというコンセプトは、
MBA留学をする前から別のかたちで意識していました。

ドラッカーが、これからは2足でも、3足でもわらじを履いて、
自分の仕事以外のところでも社会とのかかわりを持つことが
キャリアだといっていたので、
仕事以外で関心のある自然エネルギーや省エネについての集まりや活動に
積極的に参加していましたし、地域の新しい産業づくりを有志で行っている団体に
所属したりもしていました。

もともとキャリアの語源は、四輪車とか車の道からきているので、
一輪ではなく、二輪、三輪と走る車なら車輪が多い方が安定するではないか
ということです。
多様なネットワークというのは、
ライフシフトの著者グラットン教授も変革資産としてあげていますが、
私の転職にも繋がる話なので、しっかりとどのように影響していったかを
後ほどシェアできればとおもいます。

あらためて、イバラ教授のアドバイス通り、
新しい自己(Possible Self)の一つであるコーチングを中心としたネットワークを
作りたいと思い、国際コーチング連盟の日本支部に早速登録して、
会議に出席したり、ボランティア募集に応募したり、
仕事とは別にプライベートでの活動をしました。

一番は、自分自身のコーチング経験を増やしたいと思い、
どなたか関心のある方を探したかったのですが、
日本に帰ると、まわりが留学前の私との付き合いが長いせいか、
新しいキャリアを売り込む隙がないように感じてしまい、
意欲が削がれてしまいました。

オーストラリアでは、すでにクライアント2名にセッションを
受けていただいていたのに、日本に帰ってからはどうしたらいいのだろうと
怖気付いてしまいました。やはり過去の自己像、
今のキャリアに引っ張られてしまったのだとおもいます。

スモールステップは踏み出したものの、スモールWINもない状況で、
それでも何かしらのシフトはしたかったので、
いくつかの転職サイトに登録することにしました。

この転職サイトより出会うことになるキャリアエージェントたちの
愉快な面々については、いろいろな失敗談も踏まえて、
次の章でお話ししたいとおもいます。


参考文献
ユヴァル・ノア・ハラリ. (2016). 年, 柴田裕之 (訳),『サピエンス全史~ 文明の構造と人類の幸福~』.