2017年10月6日金曜日

100年人生のキャリアをプランする

先日NHKのニュース番組で、高齢者の定義が65歳から75歳に
繰り上げる動きがあるとの報道がありました。
日本老年学会発表に寄ると、
「身体の働きや知的能力が5~10歳若返っている」という話。

ハーバードビジネススクールのLinda GrattonとAndrew Scott(2016)によると、
100年前に比べ寿命が格段に伸びており、若い世代ほど、
長生きする確率が高くなるため、今の私たちの両親世代(60代、70代)の
寿命を前提に人生設計を考えると、あまりうまくいかないと警鐘をならしています。

これからは珍しくない100歳人生

Lindaらのリサーチによると、
日本で2007年に生まれた子ども(2017年現在、10歳)の50%が
107歳まで生き延びる可能性があるそうです。
5割といえば、個人的には50/50でどちらともいえない
かもしれませんが、日本全体で考えれば、
2007年生まれの半数は、この歳まで生きているということになります。

グラフ1が示す通り、他の先進国と比べると日本はダントツで長寿の国のようです。












グラフ1:Gratton, L. & Scott, A. (2016)

幼児死亡率の減少、生活習慣病の予防、高齢者に起こりやすい病気の克服など
医学の進歩や食習慣、衛生環境の変化によって、1840年から10年ごとに
寿命が3年弱伸び続けているそうです(Gratton, L. & Scott, A.  2016, p.17)。

先ほどの生き延びる確率50%の年齢107歳をベースに考えると、
下の表のように現在(2017年時点)60歳の方も5割の方が92歳まで生きている
ということになります。これは、現在の男性・女性両方の
平均寿命80歳と87歳を超えています。

◆50%の確率で生きる年齢

2007年生(10歳) 107歳
1997年生(20歳) 104歳
1987年生(30歳) 101歳
1977年生(40歳) 98歳
1967年生(50歳) 95歳
1957年生(60歳) 92歳

100年人生のキャリア・プラン

長生きすると老後お金が足りなくなるという話は以前から話題になっているので
さほど新しいことではありませんが、
彼女らの議論が興味深いのは、100年人生のライフプランは、
現在我々が社会のシステムとして取り入れている
教育→仕事→リタイアメントという3ステージのパラダイムでは、
学び方、働き方もまた現状の考え方では立ち行かなくなるというところです。

100年人生を現在の3ステージの人生設計で考えると、グラフ2ような表になります。

グラフ2

65歳でリタイアして、残りの35年を無収入で暮らすためには、
年金として退職時年収の半分程度を見込んで毎年貯金するとすると、
毎年年収の25%を貯蓄にまわさなければなりません。

そこで、仕事の期間を10年~15年伸ばして、
生涯の収入を増やすというオプションが
現実的な方法になってくるのですが、
ただ単に仕事の期間が43年から53年に延ばせば良い
ということではないというのが、Lindaらの議論です。

20年後のキャリアをとりまく風景

現在、ビジネス環境は激しく変化しており、テクノロジーの発展により
今存在する仕事そのものがロボットやAIにとって替わる時代に差し掛かっています。
Frey, C.B. & Osborne, M.A. (2017)によると、今存在する仕事の60%が
20年後にはなくなる可能性があると予測しています。

職種によりますが、同じ仕事、職業を選択して一生涯その仕事に従事すれば
安定した収入が見込めるという時代ではなくなってきたということです。

同じ仕事、職業に就いていたとしても、10年前、20年前の知識や経験の延長では
競争に打ち勝てない環境になってきたのは確かです。ソニーのウォークマンが、
PCメーカーのアップルに音楽配信の流通そのものを変革されて廃れていったことや、
カーシェアリングのアプリUberがタクシー業界を脅かしていることも、
同じような仕事を昔と同じようにやっていれば安泰という時代ではないことを
物語っているのではないでしょうか。

では、このような変化の激しい100年人生を
どのように設計すればいいのでしょうか。

お金や健康はもちろん充実した人生には欠かせませんが、
Lindaらが焦点を当てているのは、お金や不動産など目に見える資産ではなく
Intangible Assetsといわれる「目に見えない資産」をいかに上手にマネジメントして、
楽しく、生き甲斐を感じながら長生きするかということです。

それでは、「目に見えない資産」とはどのようなことでしょうか。
次回は、「目に見えない資産」について具体的にご紹介いたします。


参考文献

Gratton, L. & Scott, A. (2016), The 100-Year Life: Living and working in an age of longevity, Bloomsbury Publishing.

Frey, C.B. & Osborne, M.A. (2017), ‘The future of employment: how susceptible are jobs to computerisation?’, Technological Forecasting and Social Change, vol. 114, pp. 254-280.