2017年10月30日月曜日

キャリアシフトでは義理や体裁を考えてはいけない

かつて人生には目指すべきモデルがあり、自然と人生設計ができていた。
今は、何をやったら「合格」「100点」かわからない中で、人生100年、自分の生き方を自分で決断しなければならない。 
経済産業省 次官・若手プロジェクト・ペーパーより


復職について正直な感想

今思えば…という話で現時点ではあまり生産的ではないのは承知していますが、
こういう結末なら、留学前に辞めてくればよかったとさえ思います。
恐らく、これからMBAを目指す方もいらっしゃるかと思うので、
今いる会社に残るというオプションを真剣に考えている方には、
その後のキャリアがどのようになっていくか、また、
まわりの反応などを参考にしていただければと思い、
正直な気持ちを書いてまいります。

私の今の正直な気持ちは、帰国後の貴重な1年が勿体なかったなと思っています。
会社のなかでMBA制度がしっかり構築されていて、
帰国後のフォローアップ体制や先輩の活躍など実例があるような会社であれば、
残る価値はあると思いますが、私が在籍していた企業のように
漠然と私費留学は認めるが、その後のフォロー体制を全く描けていない所は、
引き留めにあっても、情とか義理に流されず、
残らずにきっぱりとオサラバしたほうが、お互いのためになるでしょう。

日本特有のキャリア志向

「情とか義理を捨ててさっさと転職なんて、
そんな冷たい虫のいい話があるわけない。」

なんて日本では言われてしまいそうですが、
それでは逆に、今の仕事が10年後、20年後まで続けてあるという保証が
どこにありますか?と問いたいとおもいます。

シャープだって、東芝だって、優秀な企業でしたが、
まわりの変化に飲まれて危うい状況です。
これからは、収入の安心だとか安定だとかを企業に求めていく時代ではありません。
一人ひとりが、自分自身の選択によって、得意なことをキャリアとして積み上げて、
それを提供していく。
提供するスキルやコンテンツが寂れてしまわないよう
成長できる場を自ら選択するのであって、
決して企業に選ばれるのを待っているだけではありません。
よく半年、1年で転職しようとすると
なるべく長く残ってもらいたい企業には見栄えが悪くなるから
と思って我慢している方がまだまだ多いようですが、
自分自身が最大限活かされて、成長できる場を探しているのですから、
期間などまったく関係ありません。

世界のキャリア志向と幸福度

このようなキャリアに対する感覚は、
欧米では普通のことだと、オーストラリアに行って特に感じました。
オーストラリアでの経験では、平均勤続年数が2年程度なので、
1、2年で仕事先を変えるのはざらでした。

例えば私がシドニーで仲良くさせてもらっていたポーランド人のM氏は、
私が妻と一緒にシドニーへ来た2014年から現在(2017年)の3年間で
3回転職しています。
私の肌感覚だけでは、説得力がないので少し調べてみました。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の国際労働比較データによると、
オーストラリアで10年以上勤続している労働者が、約23%しかおらず、
10年未満が77%でそのうち、3年未満が40.5%もいます。

一方、日本はと言いますと、勤続10年以上、45.1%で
勤続3年未満は、22.7%と約半分です。

そんなにころころ仕事を変えなければならない状況では、
安定しないしプレッシャーを感じているから幸せではないのではないか
という疑問もわくかと思いますが、その逆です。
国連のSDSNのWorld Happiness Report(2017年)による幸福度順位で
オーストラリアは、福祉国家の北欧諸国(ノルウェー、デンマーク、フィンランドetc)
に並び、8位に位置しています。

一方で日本は、何番目かご存知でしょうか?

51位です(笑)。

各国の平均継続年数の比較で行くと、
下のようになりますが、( )内が、幸福度の順位です。


  • ノルウェー 9.0年(幸福度順位1位)
  • デンマーク 7.4年(幸福度順位2位)
  • アメリカ  4.2年(幸福度順位14位)
  • 日本    12.1年(幸福度順位51位)


オーストラリアの平均勤続年数がデータとしてないので比較できませんが、
ご覧のように勤続年数が長いことが豊かな人生に貢献しているという認識は
少し外れているのではないかとおもうのです。

これからのキャリアシフトを考える

ここでもう一つ非常に興味深いデータをお見せします。
これは、経済産業省の若手官僚らがまとめた資料として
かなり賛否両論あったペーパーからの抜粋ですが、
イラスト1にあるように「正社員になり定年まで勤めあげる」
という生き方をする男性は、1950年生まれで34%のところ、
1980年生まれの方々は27%に減っています。

イラスト1
出典:2017 経済産業省, 不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~, p11.


左側が女性の生き方を結婚と家族の視点で描いていますが、
こちらも「結婚して、出産して、添い遂げる」という
生き方をする若手(1980年生まれをセグメントとして)が
減っているという内容です。少し間接的になりますが、
多様な働き方をする女性も圧倒的に増えているということだとおもいます。

ここで見ていただくとわかる通り、兼業、副業や社外に出る人、
非正規雇用、あるいは主夫(無職層)という選択肢もあるかとおもいます。
そんな多様な働き方をする人たちが日本国内でも増えているので、
若手官僚の皆さんいわく、
「高度経済成長の社会を前提につくられたシステム=昭和の人生すごろく、
すなわち、“サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし”では、
このような多種多様な働き方をする人々の100年人生を豊かにすることは
できないのではないか」ということです。

私たちは、一人ひとりが自覚をもって自分自身のキャリアについて
国任せ、社会任せ、企業任せにせず、これから来たる新しい社会の在り方を見据えつつ、
自らの選択肢を広げていかねばならないのではないでしょうか。



参考文献

 経済産業省  (2017).  "不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~".
 JILPT (2017).  データブック国際労働比較2017, p123.  
   Helliwell, J., Layard, R., & Sachs, J. (2017). World Happiness Report 2017, New York: Sustainable
   Development Solutions Network.


2017年10月6日金曜日

100年人生のキャリアをプランする

先日NHKのニュース番組で、高齢者の定義が65歳から75歳に
繰り上げる動きがあるとの報道がありました。
日本老年学会発表に寄ると、
「身体の働きや知的能力が5~10歳若返っている」という話。

ハーバードビジネススクールのLinda GrattonとAndrew Scott(2016)によると、
100年前に比べ寿命が格段に伸びており、若い世代ほど、
長生きする確率が高くなるため、今の私たちの両親世代(60代、70代)の
寿命を前提に人生設計を考えると、あまりうまくいかないと警鐘をならしています。

これからは珍しくない100歳人生

Lindaらのリサーチによると、
日本で2007年に生まれた子ども(2017年現在、10歳)の50%が
107歳まで生き延びる可能性があるそうです。
5割といえば、個人的には50/50でどちらともいえない
かもしれませんが、日本全体で考えれば、
2007年生まれの半数は、この歳まで生きているということになります。

グラフ1が示す通り、他の先進国と比べると日本はダントツで長寿の国のようです。












グラフ1:Gratton, L. & Scott, A. (2016)

幼児死亡率の減少、生活習慣病の予防、高齢者に起こりやすい病気の克服など
医学の進歩や食習慣、衛生環境の変化によって、1840年から10年ごとに
寿命が3年弱伸び続けているそうです(Gratton, L. & Scott, A.  2016, p.17)。

先ほどの生き延びる確率50%の年齢107歳をベースに考えると、
下の表のように現在(2017年時点)60歳の方も5割の方が92歳まで生きている
ということになります。これは、現在の男性・女性両方の
平均寿命80歳と87歳を超えています。

◆50%の確率で生きる年齢

2007年生(10歳) 107歳
1997年生(20歳) 104歳
1987年生(30歳) 101歳
1977年生(40歳) 98歳
1967年生(50歳) 95歳
1957年生(60歳) 92歳

100年人生のキャリア・プラン

長生きすると老後お金が足りなくなるという話は以前から話題になっているので
さほど新しいことではありませんが、
彼女らの議論が興味深いのは、100年人生のライフプランは、
現在我々が社会のシステムとして取り入れている
教育→仕事→リタイアメントという3ステージのパラダイムでは、
学び方、働き方もまた現状の考え方では立ち行かなくなるというところです。

100年人生を現在の3ステージの人生設計で考えると、グラフ2ような表になります。

グラフ2

65歳でリタイアして、残りの35年を無収入で暮らすためには、
年金として退職時年収の半分程度を見込んで毎年貯金するとすると、
毎年年収の25%を貯蓄にまわさなければなりません。

そこで、仕事の期間を10年~15年伸ばして、
生涯の収入を増やすというオプションが
現実的な方法になってくるのですが、
ただ単に仕事の期間が43年から53年に延ばせば良い
ということではないというのが、Lindaらの議論です。

20年後のキャリアをとりまく風景

現在、ビジネス環境は激しく変化しており、テクノロジーの発展により
今存在する仕事そのものがロボットやAIにとって替わる時代に差し掛かっています。
Frey, C.B. & Osborne, M.A. (2017)によると、今存在する仕事の60%が
20年後にはなくなる可能性があると予測しています。

職種によりますが、同じ仕事、職業を選択して一生涯その仕事に従事すれば
安定した収入が見込めるという時代ではなくなってきたということです。

同じ仕事、職業に就いていたとしても、10年前、20年前の知識や経験の延長では
競争に打ち勝てない環境になってきたのは確かです。ソニーのウォークマンが、
PCメーカーのアップルに音楽配信の流通そのものを変革されて廃れていったことや、
カーシェアリングのアプリUberがタクシー業界を脅かしていることも、
同じような仕事を昔と同じようにやっていれば安泰という時代ではないことを
物語っているのではないでしょうか。

では、このような変化の激しい100年人生を
どのように設計すればいいのでしょうか。

お金や健康はもちろん充実した人生には欠かせませんが、
Lindaらが焦点を当てているのは、お金や不動産など目に見える資産ではなく
Intangible Assetsといわれる「目に見えない資産」をいかに上手にマネジメントして、
楽しく、生き甲斐を感じながら長生きするかということです。

それでは、「目に見えない資産」とはどのようなことでしょうか。
次回は、「目に見えない資産」について具体的にご紹介いたします。


参考文献

Gratton, L. & Scott, A. (2016), The 100-Year Life: Living and working in an age of longevity, Bloomsbury Publishing.

Frey, C.B. & Osborne, M.A. (2017), ‘The future of employment: how susceptible are jobs to computerisation?’, Technological Forecasting and Social Change, vol. 114, pp. 254-280.

2017年10月4日水曜日

アフターMBA~新しい旅のはじまり~


あれからもう1年半か…

このブログがきっかけで
「40からのMBA留学」という本を出版し、
嬉しいことに多くの方々からの反響をもらった。

2016年3月下旬、日本に帰国してから早1年半が経つ。
ある知り合いから、「MBA取得後どうなったのかも知りたいのでは?」
と言われ、確かにそうかもしれないと思っていた。

MBAをこれから目指したいという候補生からよく聴かれることは、
「学んだことが実際に役に立ちましたか?」である。

私の答えは、1年後の今でも「もちろん!」と言いたい。
ところが、同時にそれは、質問をする方が、
何を基準に役に立つかを聴いているかによるところもあると思うのである。
投資に対する費用対効果か、組織内の肩書という見た目の話か、
会社や社会への貢献度か、それとも自分自身の満足度か。。

あまり語られないMBAのその後

海外MBA取得までの体験談は、人生の中でも特別な体験ができる期間なので
多く語られたものがある。それでは、MBA取得後のキャリアはどうだろうか。
会社のMBA制度に参加する者は、そのまま所属する会社に復帰するし、
会社を辞めて来た者は、再就職の活動をして、新しい仕事に就く。
MBA取得後の就活についてガイドする本も出始めているようだが、
果たしてこれらがどれだけ役にたつのだろう…

仮に就活のガイドで目指した仕事に就けたとして、
その先どうなったかが一番知りたいところではないだろうか。
というのも、私が経験したMBA取得後のキャリアにたいする理想と現実には、
思った以上にギャップがあったから。

特に日本では、それを埋める手段が非常に限られていたことにとても驚いたし、
焦燥感みたいなものを感じたこともあったのは確かだ。
このあたりは、なかなか語られることがないし、
たぶん語れば「それ見たことか!MBAなんて役に立つわけない。」と、
MBAを選択しなかった方々から自分たちの正当性を証明する証拠として
つるし上げにあうから、語らないのかもしれない。

キャリア・シフティング

そもそも仕事から1年半~2年も離れて海外でビジネスを学び、
この日本に帰ってきた時にどれだけの意味があるのだろうか。
学んできたことをどのように活かしていったらよいか。
40代でMBA留学を通してキャリアチェンジを考え、
実行に移したときに見えてきたこと、感じたことについて、
同じようにこれからのキャリアをどうしようかと悩んでいる方々にも
参考にしていただければと、私自身の失敗談も織り交ぜながら
綴らせていただきたいとおもう。

特に私のように、今までやってきた仕事が本当に
この先一生続けていきたい仕事なのかを問いながら、
今の仕事を続けてきた方もそう少なくないとおもうので
どうキャリアをシフトしていくかをテーマに
これからは考えてみたいとおもうのである。