2017年12月21日木曜日

”MBA Lounge”の 川尻秀道さんに聴くキャリアシフト

今回は、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のMBAを取得された
川尻さんにMBA後のキャリアについてインタビューしました。

川尻さんは、MBA取得後台湾勤務を経て2014年に独立、
MBA Loungeとアジアビジネスコンサルティング、
中国語教室運営を行うなど、精力的な起業家です。

<対談>
■MBAを目指したきっかけは何ですか?

MBA留学をしたいと思ったきっかけは2つあります。
ひとつは、住宅メーカーの建材仕入れの仕事をしていたのですが、
取引する商社の方々が皆さん当然のごとく英語ができる、
世界を相手にしている、財務諸表も皆さんわかるし、
そういう「世界を股にかけて」活躍する方々をみていて、
自分もそうなりたいと思っていました。
仕事の関係で、初めは建築か土木系で留学かなと思っていましたが、
専門性を絞らず、経営すべてを学ぶマルチなところでMBAかなと思いました。
また、そのときの会社の社長が、アメリカの大学へ留学後、フィンランドへ渡り、
何もない所から起業した方で、そういう話を聞いていると、自分も社長のような
生き抜く力みたいなものを身につけたいとおもいました。

二つ目は英語を上達させたかったので、海外に住みたかったからです(笑)
オーストラリアへの留学を決めたのは、22のときにワーホリで行ったのが
きっかけでした。


■2007年(28歳)から1.5年でQUTのMBAに行かれたわけですが、
 行く前は取得後のキャリアパスをどのように考えていましたか?

世界を股にかけるような海外出張に行ったりする仕事をしたいと思っていました。
産業にはこだわらない、コンサル会社のイメージです。

■勤めていた会社は、辞めて留学されましたか?

辞めるつもりでしたが、親族が経営する会社で、引き留められました。
無下に断ることもできず、形だけ籍を置く形で仕事から離れました。
最終的には、会社自体がなくなったので、辞めるのと同じ状態になったのですが、
それでも籍があったので金銭的に多少の違いはありました。

■なるほど。私も嬉しいことに引き留められて、休職扱いで留学したのですが失敗しました(笑)これからは、理解のある企業も出てくると思います。休職という選択肢も増えると思いますが、これからMBAを目指す方々にこのあたりでアドバイスはありますか?

会社も仕事も好きだったら、残ってもいいと思います。
変な話、私費留学なら大きな持ち出しとなるので、迷っているなら残って、
利用できるものは利用するという現実主義でもいいと思います。
辞めたいときには、MBA後に辞めればいいですし。
ただ、全く戻る気がないのなら、引き留められてもやめた方がいいと思います。

■同感です。戻る気ないのなら行く前にスッキリしたほうが、
 次のアクションを真剣に考えられますし。
 留学中は何か就職活動など積極的に行いましたか?

特に日本で仕事を探すつもりはなかったので、就職エージェントなどに
アプローチかけたりはしませんでした。
ただ、カリキュラムが終わる頃に残金100万円ありまして、これを使って
Master of Marketingを取ってダブルメジャーにするか、
台湾に行って語学学校に入り、中国語の勉強をしながら仕事を探すかで悩んでいました。

実は、オーストラリアにいる間に学校が休みの期間があったのですが、
そのときに短期で台湾に行きました。その時の体験で衝撃を受けて、
ぜひまた訪れたいと心に決めていました。
ですので、最終的にはMBA取得後に、台湾に渡るほうを選択しました。

■日本で仕事をしないという目標は達成できましたね(笑)
 台湾の語学学校に入って勉強しながら、国内で仕事を探したのですか?

はい。MBAをやって、会社の運用に興味を持ちました。
コースでは、仮想コンサルティングとしてのケーススタディを数多くやったので、
どんな産業でもいいので事業運営にかかわる仕事、戦略立案やマーケティングを
やりたいと思いました。

■台湾での就活はどのように行ったのですか?

語学学校に通いながら、同時進行で就活していました。
パソナなどの就職エージェントに登録して台湾の
日系現地法人などの面接も受けましたが、
仕事の内容ががっちり決まったポジションで、あまり魅力を感じませんでした。
そんななか、オーストラリアで知り合った人の紹介で
某家具メーカーが日本進出を考えているので、
事業責任者をやってみないかという話をいただき、喜んで受けさせていただきました。



■正規の就職エージェントなどの募集からではなく、ご自身のネットワークからの紹介で仕事を見つけられたというのは、興味深い話ですね。どのような仕事でしたか?

100%台湾人の会社で、新しく日本へ進出したいということで、
全く何もない所からのスタートでした。事業計画を立てて、
どのように展開していくかを考えて実行するという、
全く0からの事業に携われたことは、本当にラッキーでした。
MBAで学んだことをフル稼働させて、挑戦した感じです。
ですが、その後、突然日本進出を中止することになり、
ビザ更新ができなくなったので、あらためて次の仕事を探すことになりました。
2010年(32歳)のことです。

■台湾の会社で学んだことは?

まず、自分主導でなにかを行うというのは向いているなということです。
もう一つは、MBAで習ったことを方端からやってみましたが、
やはり「そのまんま」でやっても駄目だということに気づかされました。
言葉や文化の違いなど人間関係などソフト面も非常に重要だと学びました。

■で、その後はどうされたのですか?

実は台湾で今の奥さんと出逢い、結婚していましたので、
ある程度の収入がまず必要でした。
ひとりなら他の選択肢も考えたと思いますが、日本に戻ることにしました。
この時は、相性の良い転職エージェントとの出会いがあり、
4社ほど面接して、そのうちの1社に決まりました。

今回も特にどの産業とはこだわっていなくて、
海外に関わる仕事として機械部品の調達や美容機器メーカーなどの面接もうけました。
最終的に農産物関係の海外事業部にお世話になることになりました。
こちらは100%海外の顧客ですし、海外出張もあり、MBAを目指したころからの
「世界を股にかける仕事」という点では、最も適していました。

■日本に帰ってきて4年くらいで、自ら起業されたわけですよね。きっかけは?

やはり大きなグループ会社の子会社で、上司などをみていると、
「自分の20年後がこれか」と思うと、なんとなく嫌だなと思うようになり、
台湾で新規事業に関わっていた頃の楽しさが忘れられなかったからです。

新卒で入った時の会社の社長が、私の親族でしたので彼の背中をみていましたし、
経営者のDNAが自分のなかにもあると感じていましたので、
ここであらためて自らのビジネスをやりたいと思いました。
起業については、最初からでっかくビジネスをやることは考えてなかったので、
まず考えたのは自分が今できることは何かということでした。

そこで、3つのビジネスを同時に立ち上げました。
MBAを目指す方々のサポートとしてMBA Lounge
台湾人の妻がいるので、中国語会話の教室
そして、台湾での新規事業立ち上げにかかわった経験から、
台湾へのビジネス進出コンサルティングという3つのビジネスです。

■職種も違うし、個人事業主になられたわけですが、会社員からキャリアをシフトするのに何か苦労はありましたか?

精神的には苦労はありません。
やりたいことをやっているのでむしろ楽しいです。
MBAなら市場調査して、どのように売るかとか戦略立案してから
実行みたいなところがありますが、そんな資金もないですし、
まずはやってみて儲からなければやめればいいと思って小さくスタートさせました。

やりながらマーケティング調査もやっている感じです。
やりたくない仕事を我慢して会社員としてやることはどういうことか十分わかったので、
あとはやりたい仕事をやりたいと思いました。

■やりたくないことを頑張っても、人生楽しくないですからね。
 MBAを目指す方々に取得後のキャリアについてのアドバイスをするとしたら?

MBA出願時に、自分は学んだことをその後どう活かしていきたいかのエッセイを
書かなければならないので、その時にシナリオを考えるかとおもいますが、
これは自己分析をするいい機会だと思います。

ただ、それはそれとして、行ってからからまた考えればいいのだと思います。
行けばいろんな人と会いますし、考えも変わってくると思います。
迷ったら、自分の好きな方を選ぶ。決して前と同じ環境には戻らないことです。


■ありがとうございます。最後にベタな質問をさせてください。
 MBAは、結局のところ役に立ちましたか?

もちろん役に立っています。

だって、MBAをやっていなかったら、
MBA Loungeはできなかったのですから。

MBAでは、自己流ではなくて世間で正しいと
言われているやり方を知ることができます。

そこを知ることで、教科書通りのやり方と
そうではないやり方の両方を検証できますので、
やはり広い視野でビジネスを考えることが出来ると思います。
MBAをやれば、考え方が変わります。
人との付き合い方も変わります。
そして、人生を変えます。

■本日は、非常に興味深いお話をありがとうございました!

2017年12月10日日曜日

転職であまり活用されない3つ目のネットワークとは?

三つのネットワーク

これまでの議論は、冒頭でキャリアシフトに必要な3つの資産についてお話ししましたが、

そのうちの二つ、
自己認識(古いペルソナと新しいペルソナの和解、自分なりの物語をつくるetc)、
新しい経験へのオープンマインド(仕事を辞める覚悟や新しい行動とスモールWINを生み出す行動etc)が中心でした。
今回は、多様なネットワークについて、
キャリアシフトでどう使って行ったら良いかをお話しします。

日本国内では、転職というと今まで話して来たように、
どこかの転職サイトに登録してエージェントを通して活動するか、
転職サイトの募集に応募して書類選考を待つというパターンが主流だとおもいます。

転職とネットワーク活用について長年研究されている上智大学の渡辺教授によると、
転職に利用するネットワークは、大きく分けて3種類あるといいます。

1)フォーマルな方法(転職エージェントや転職サイト、職業安定所)
2)直接応募(企業の採用情報)
3)人的つながり

上から順に私たちが利用する頻度の高いネットワークなのですが、
ここで焦点をあてたいのは、最後の人的つながりです。

人的つながりを考えた時に、

つながりの強さで「弱いつながり群」と「強いつながり群」とに分けられます。
変革資産の一つ「多様なネットワーク」を意識して作っていくことが、
どのようなビジネス展開でも重要な活動であることは、昔から言われています。

Never Eat Alone(独りでごはんを食べないこと)」の著者キース・フェラジーは、

ネットワーキングするのにランチやディナーに誘うのは、
フォーマルなミィーティングよりも効果的で、
忙しい役員クラスの方々との格好の交流機会なので、
独りで食事せずにどんどん会いたい人を誘いましょうといっているのですが、
その中でも「弱いつながり群(weak ties)」が
ビジネスの紹介や人材募集に役立っていると指摘しています。

これは、アメリカでの事例ですが、
実は転職時に収入が高い、または、望んだ職につけた方々のリソースとなったネットワークの上位に
この人的つながりにおける「弱いつながり群」が挙げられています。

段稀にしか合わない人々からもたらされる情報は、

自身が所属する強いつながり(親族や仕事関連のつながり)で
得ている情報とは異なっているため、転職可能性が広がると同時に、
弱いつながりである知り合いが橋渡しをしてくれるため、
採用される確率も高くなるということです。

日本での転職とネットワーク活用

渡辺教授によると、
日本では20年前くらいまでは、
人的つながりによる転職率が男性労働者に限りですが、54%も占めており、
そのなかでも強いつながり群からの転職が多かったようです。

しかし、その後フォーマルな転職市場の拡大もあり、

人的つながりを使って転職活動をする方は2割程度に縮小しており、
強いつながり群を利用するより、弱いつながり群を利用する方々が多くなっているようです。

その理由の一つとして、

組織の高いポジションにいる方々は、
強いつながり群から同じようなポジションを探すことで収入のより高い、
または、やりがいのある仕事を探すのは効果的ですが、
私たちのような普通のサラリーマンにとってはこのようなメリットはないため、
強いつながり群を利用していないからのようです。

渡辺教授によると、

多くの異なる他者との関係を取り結ぶ「開放型」ネットワークを保持する労働者が望ましい転職結果を得る可能性が高くなると考えられる

と述べています。

私の転職とネットワークの関係

実は、私の転職活動でも
この「人的つながり」における弱いつながり群に支援された経験があります。

現在、再生可能エネルギー事業の営業企画のポジションという

当初予測していなかったキャリアシフトができたのも、
仕事以外のネットワークで知り合った方が、
たまたま転職サイトから面談オファーをいただいた企業の
重要なポストに付いていらっしゃったからです。
その方との出会いは、7年前でしたし、
以降一度もお会いすることはなかったのですが、
お会いするきっかけがテレビ局の取材という特別なイベントでしたので、
向こうも覚えていてくれました。

たまたまその企業が募集されていたのは

前線の営業職でしたが、
募集していたポジションにこだわることなく、
何度か面接の機会をいただきました。
現在私が望んでいること、持っているスキルや知識について、
採用担当者からもご考慮いただき、
異なった部署の責任者と面談させていただきました。

4回の面接を経て

最終的に今のポジションならもう少し私のやりたいことが実現できそうだ、
とおもい受けさせていただくことにしたのです。


ここまで読まれた皆さんは、
なぜ人材教育や組織開発系の仕事へ
シフトしていないのかとおもわれるかもしれません。
しかしここがミソで、営業企画というのは、企業の組織全体をみて、
既存製品&サービスの販売促進や新製品&サービスの開発の手伝い、
プロモーションとブランディングを手がけるという
組織レベルで舵取りの一部を担う部署になります。

前職のように一部署内の仕事ではないですし、

ブランディングを行うには、外へ向けてのプロモーションのほかに
組織の内側への働きかけも必要です。
立場として人事部門と連携することもありますし、
各事業を跨いでの仕事も舞い込んでくるので、
そのなかで研修コンテンツや体制についての提案をすることも
やろうとおもえばできるはずです。

同時に私の専門だった住宅産業の知識が、
再生可能エネルギーの分野でも一部で使えるので、
医療ですとか車などのように全く関連性のない産業へ
シフトするよりも無理なく移行できるという利点もあります。

そのほか、収入面やロケーションなど考慮したい要件もありましたが、

以前から省エネやサステイナビリティ(持続可能な社会)については、
建築の分野でも私自身のサブテーマとして追いかけていたことですので、
今まで語って来た古いペルソナと和解すること、
他者への貢献という思いで仕事をする、
大きなチェンジよりスモールWINを目指す
などの指標がストンとハマるようなポジションでしたので、
ここで新しい一歩を踏み出す決心をしました。

多様なネットワークを育む


私の転職体験がすべての方々に当てはまるかといえばそうではないとおもいますが、
ここでお伝えしたいのは、ライフシフトのグラットン教授がいうように
「多様なネットワーク」は、キャリアシフトを行う時の
有効な変革資産になるということです。

しかし、いざ転職活動をおこおうとした時に、

さあ多様なネットワークをつくろうといっても
短時間で簡単にできるようなことではありません。

ですから、ここでのアドバイスは、30代、40代の普通のサラリーマンは、
これからのキャリアシフトを見据えて、仕事以外での弱いつながり群も
意識したネットワークづくりをしたらどうでしょうかということです。

おそらく皆さんも趣味や関心ごとによってもうすでにネットワークがあるのかもしれません。


興味深いのは、このようなネットワークでやり取りする人間関係は、
常に利害が伴うビジネスでの関係と異なり、
お互いに信頼や楽しさを共有できる関係ですので、
自己効力感も増しますので、人生そのものも豊かにしてくれます。

グラットンのいう変革資産は、何もキャリアシフトだけに必要な資産ということではなく、

自身の精神的成長に欠かせないIntangible Assets(目に見えない資産)という意味で
焦点をあてています。

転職活動は、そのなかでほんの一部分に過ぎませんが、

いざキャリアをシフトしたいと思い立って行動に移した時に、
この人的つながりというのを見落としがちですが、
その時にあるのとないのとでは、その後の人生に大きく影響することが多分にあるということです。

前著「40からのMBA留学」でも述べましたが、
わざわざ多額の費用をかけて海外に暮らし、授業を受けに行くというのは、
「学ぶ」ということ以外に他業種の、しかも世界のビジネスパーソンと交流するという視点いえば、
変革資産を増やしに行く=人生をさらに豊かにしにいくということです。
MBAは無駄だという議論をする方々は、この見えない資産について数値化できないため、
数値化できるような単純な話しかできないのです。

多様なネットワークを意識してつくりましょうという話だけでは、
取り留めのない話ですので、ここではもう一歩踏み込んで、
MBAホルダーとして、40代のプロフェッショナルとして
どう構築していくかの提案をしたいとおもいます。

ひとつは、LinkedIn(リンクトイン)の活用です。

日本ではFacebookのほうが有名でこちらをビジネスにも利用している方もいらっしゃるようですが、

世界レベルでみたときにはLinkedInのほうがビジネスに近いネットワークといえます。
プロフェッショナルのSNSと言われているだけあって、
日本以外の方とゆるいネットワークを構築しする場合には利用しやすいSNSといえます。
自分の携わる産業の情報やビジネスに関する自分なりの考えなどを
プレゼンするブログ投稿の場もあります。

プロフィールは英語で書いた方がよいでしょう。

外資系の日本法人などが採用のために使うこともありますので、
こちらでのプレゼンスをあげることは、
自分自身のプロフェッショナルとしてのブランドを高めることにつながるでしょう。

もうひとつは、自分の関心ごとに沿ったイベントに参加したり、
協会などの仕事にボランティアで積極的に参加してみることです。
現在私は、国際コーチング連盟(ICF)の会員として登録しています。
ICFには日本支部があり、そちらでは運営委員として立候補させていただきました。
コーチングは、これからやっていきたい仕事であり、
大きな要ですから、今まで交わりのなかった方々とのつながりを
作る意味でも非常に重要な場所だと考えています。

その他にもMBAを取得したおかげで、
MBA友の会(これからMBA を目指す方々も参加可能)という集まりにも参加させていただき、
他業種の方々と交わる機会を得ましたし、
このブログを通してお知り合いになった方々も私にとっては大切なつながりです。

結局のところ、変革資産として「利用する」という感覚で
このネットワーキングするのは間違いで、
まずは、ギブ(貢献する)することで自分も満足できる関係があると
さらに人生が豊かになるという本質(=人はSocial Amimalである)を
理解することが大切なのだとおもいます。

最後のアドバイスになりますが、
キャリアシフトを決心して転職活動を始めたり、
仕事を辞めたりしたタイミングでは、
「そういえばあの人は元気でやっているかな?」
という方々を一度思い浮かべてみるのはいかがでしょうか。

仕事が忙しくて会っていない方が少なくとも何人かいらっしゃるはずです。
そんな方に「お久しぶりです」と声をかけてみるのはいかがでしょうか。
思いもよらない新しい出会いがあるかもしれませんよ。
出会いは偶然ではなく、必然ですから。




参考文献

渡辺深 (2015), 転職とネットワーク. 学術の動向20(9), 9_20-9_25.







2017年12月4日月曜日

自分のキャリアシフトに適したポジションの見分け方

面談についての失敗

新しいキャリアへシフトする場合には
必ず通らなければならない道ですが、
私もいろいろな職種にアプライして、
不採用をいただいてきました。
そのなかでも非常に興味深い体験についてシェアします。

フリースクールの高校教師の職にアプライしたときの経験です。

社会経験豊富な教師陣が自由なカリキュラムを組んでいる学校法人で、
教師免許や経験を問わないということだったので応募しました。
こちらの面談スタイルは、集団面接のスタイルでした。

集合説明会のあと、何人かで面接を受けるという流れでした。
自分でもお恥ずかしい限りですが、
今までの人生の中で一番緊張しました(苦笑)。
背筋を伸ばしていると、背中の筋肉が緊張に耐えられなくて、
ガクガク・ヒクヒクするくらいにです。

志望動機と教師として何ができるかを
簡単に話してくださいという質問に、
私以外の候補者から順番に答えていくのですが、
皆さん私より若い方々なのに、
スラスラとプロのスピーチのように答えているので、
怖気づいてしまいました。

あまり気負わずにナチュラルな自分を表現すれば
良いくらいにしか思ってなかったのです。
面談で何を聞かれるかを考えもせずに本番を迎え、
事前対策済みの競合候補者にノックアウトされてしまいました。
私の番が回ってきた時には、話す声は上ずっているは、
背中は震えてガクガクしているはで、
文字通り「変なオジサンがカクカクしている」状態でした。

この話を帰って妻にしたら、大笑いされました。
教訓としては、この会社でどのような働き方をしたいか
イメージのないまま面談に行ってはいけないということです。
なんとなく自分のキャリアシフトの物語に関連があるかな
くらいの気持ちで応募したのが悪かったのだと思います。

これこそ「天職」だとおもって臨んでいる候補者とは、
やはりこんなに差がでるのだなと気づかされた一日でした。
それでも、集団説明会や集団面接は、一度受けてみるといいとおもいます。

というのも、他の転職希望者がどのようなストーリーを語っているかを
聴くことができるからです。
特に今回の高校教師の場合は、塾講師だったり、企業の教育担当者だったり
何かしら「教育」に携わっている方々の話が聴けたので、
自分の物語と比較ができて勉強になりました。


キャリアシフトに適したポジションとそうではないポジション

こういった集団面接が行われるような説明会に行くと、
40代というのはやはりあまりいないのが事実です。
よく考えてみると、20代後半、30代は、
自分が何になりたいかで動いていたようにおもうのです。
若者を一括りで語るのも、それ以外の方も必ずいるので
大雑把な言い方になりますが、パターンはあります。

社会での経験学習論で広く活躍されている松尾教授によると、
仕事におけるプロフェッショナルの条件として、
「自分への思い」と他者へ貢献することを使命と感じる
「他者への思い」の両方を兼ね備えていることだと定義づけたうえで、
次のように語っています。

若いうちは「認められたい、力をつけたい」という自分への思いが強いのに対し、他者への思いは弱いケースが多くみられます。しかし、経験を積むに従い、優れた人ほど、顧客や社会のために働きたいという「他者への思い」が強くなり、「自分への思い」と融合していく傾向にあります。

松尾教授のいうキャリアとしての「精神的成長」とは、
仕事に対する考え方、在り方が自己中心的なものから、
「他者や社会とのつながりを意識したもの」へ変化していくとのことですが、
私の感覚では、肩書きとして何になるかというキャリアより、
社会のなかでどう貢献したいか、次の世代に何を伝えたいかのほうが
キャリアとして重視したい部分でしたので、
「高校教師」という職業はリーダーシップや能力開発を広める
コーチングを行うための手段であって、天職という感覚はありませんでした。

色々な産業、職種にアプライしていく中で、
振り返ってみてあらためて思うのは、
社会、あるいは現在の人びとが抱える課題に対して取り組みたい、
解決したいと思う場合には、
もうすでに仕事の範囲や要件ががっちり決まっているポジションには
応募しない方が良いのかもしれません。

これは後になって気づいたのですが、採用側が求める人材には
大きくわけて2種類あることです(黒田, 2017)。

ひとつは、決まった業務に対して年齢、職歴、資格保持、転職回数などの基準が
社内で既に設けられているなかでの人材。

もう一つは、その組織がかかえる課題を解決するために獲得したい人材。

世に出ている募集は、圧倒的に前者ですが、
私たちキャリアシフトを考える40代、
さらにMBAホルダーが活かされるポジションは、
どちらかというと後者だということです。

まとめて分類すると次のようになります。

①業務固定型ポジション
・20代、30代前半、「自分への思い」中心の方向け。
・採用側:増員or欠員のための募集。
・多くのポジションがこちら。

②課題解決型ポジション
・40代前後(or40代以上)他社貢献へシフトしたい方向け。
・採用側:新事業や変革など現状の課題を解決するための人材発掘。
・出現率は低いが、年齢や経験にとらわれない柔軟な採用志向を持つ企業の場合が多い。

キャリアシフト活動中は、①、②を区別せずに応募していましたが、
断然②を中心に攻めたほうが、自分の古いペルソナと新しいペルソナが
和解できるベストなスペースが見つかるのではないでしょうか。





参考文献

松尾睦 (2011), 職場が生きる人が育つ 「経験学習」 入門, ダイヤモンド社.

黒田真行 (2017), “次世代リーダーの転職学: 40歳を過ぎても「企業が欲しがる人材」3つの共通点,” NIKKEI STYLE, 7th April.



2017年11月27日月曜日

キャリアシフトの転職活動で重要な2つの視点

キャリアシフトの本質

いかに今までの古いペルソナから、
新しいペルソナを育てられるスペースへキャリアをシフトするか、
というのが今回の新連載ブログのテーマです。

40ともなるとある特定の専門性の高い仕事であれば
簡単に次の仕事を探せるかもしれません。
例えば、営業が営業の仕事を探すのは、たやすいことですが、
営業がWEBマーケティング職に就きたいと思っても
競争相手がずっとWEBマーケティングをやってきた方々ですから、
なかなか難しいということは察しがつきます。

それでも今までやってきた仕事はもうやりたくないわけですから、
「せっかく今までの経験があるのに勿体ない」などといわれても、
私たちには意味のないアドバイスです。
「とどまるべきといえるのも本物のキャリアコンサルの証」
みたいなキャッチで宣伝している転職エージェンシーがあるようですが、
これはキャリアシフトの本質を理解していない方の言葉です。

傍からみると、この人は何がしたいのだろうと思われるかもしれませんが、
それもそのはずです。今まで積み上げてきたキャリアを無視した新しいペルソナが、
今までのキャリアを否定して、完全に一貫性を欠くのですから。

ここで重要なのは、①自分なりにキャリアシフトのストーリーをつくりあげることです。
また、②古いペルソナと新しいペルソナとが和解するまで時間をかけることです。

和解の時間

それでは、和解するのにどれくらい時間をかければいいかですが、
ある方などは、前職を辞めた後にもかかわらず無職のまま2年間かけて
粘り強くトライし続けた結果、やっと自身が納得できる仕事に就けた
という話もあります(途中短期の仕事などをやりながらですが)。

前著「40からのMBA留学」で紹介した40になってリストラにあったニゲールの場合は、
敢えて1年間就活しなかったそうです。その結果、やりたくない仕事に
無理に就く必要がなくなりました。

そうこうしているうちに、いいタイミングで他から仕事のオファーをもらって
新しい仕事にシフトしています。
そして休職の経験から、ワークライフバランスの伝道師になりました。
彼の「自分の人生は自分の手の中に取りもどそう」という主張は、とても共感します。

【ワークライフ・バランスの実現】


両者に共通する点は、意外に思われるかもしれませんが、
職が無い状態にもかかわらず、悲壮感が全くないということです。
これには訳があって、両者とも家族の、特に奥様の理解とサポートが
あったからのようです。そして、彼らの前向きなマインドセットです。

どうしても転職活動というと、「不採用」の数が増えるにしたがって、
自分が「ダメ出し」を食らっているような感覚、
社会から必要とされていないのではないかという不安に苛まれて、
ネガティブ思考に陥りがちですが、新しいペルソナに沿ったキャリアの種を撒いて、
出てくる芽を待ち構えているのだと思えば、目指す方向へ少しでも行動していることは
決して無駄ではないですし、逆に楽しいと感じるはずです。

どちらにしても、一筋縄ではいかないとわかれば、
とにかくトライ&エラーで失敗をたくさんしながら、
そこから学んでいけばいいのかなとおもいます。
転職活動で1年、2年というと現実的に長いと思うかもしれませんが、
和解するのにそれなりの時間が必要だという覚悟は必要だとおもいます。

失敗しまくる

私もいろいろと新しい考えに沿った試みを行い、失敗をしてきました。

転職サイトでの人材開発系の応募ではことごとく落とされたので、
こうなったら人材開発や組織変革のポジションというターゲットの絞り込みをやめて、
もう少し広い意味での教育や組織レベルでの開発や企画のポジションに
転職可能性を広げてみようと思いました。

人事系のポジションだけではなく、コンサルティングや経営企画、
営業企画系の仕事の中にだって、組織のなかで人はいかに学び、
成長していくかという視点が欠かせないのですから、
ちょっと遠回りにみえますが、とにかくアプライして
面談までは漕ぎ着けようと決めました。

面談をたくさんやることで、
少しずつ自分なりのキャリアシフトへの物語が語れるようになってきます。
古いペルソナから新しいペルソナへのシフトが関連性をもって相手にも
納得してもらえるようになれば占めたものです。

特に家族や近しい方からの承認を
まだ得られてない場合は説得力ある物語ができてから
語ってみるのもいいかもしれません。
晴れて転職というゴールには程遠いですが、
「和解をする」という観点で考えれば、
非常に重要なプロセスだといえます。

時間をかけるとは、失敗も含めまわりや自分の認識を変えていく作業のことで、
やればやるほど結果が遠のくような気がしますが、
ある時突然ティッピング・ポイント(流れが変わる点)がやってきて、
シフトする準備が整う段階にきます。

その時のために失敗しているのだと思えば、
不採用が増えれば増えるほど、「和解の日」が近づいていると思ったほうが、
粘り強いキャリアシフト活動ができるのではないでしょうか。



2017年11月22日水曜日

MBAホルダーがおススメしたい転職エージェント!

転職エージェントよプライドを持て

前回記事より
転職エージェントへの厳しい批判が続いたので、
読んでいただいている方は
少し疲れてしまったかもしれません。

取り上げた方以外にも転職希望者に対してリスペクトのない
エージェントが何人もいたので、本当はこれくらいでも足りないくらいです。
単なるお仕事の紹介をしているのではなく、
ひとりひとりの人生やキャリアを扱っているのだという
プライドを持ってもらいたいと願い書かせていただきました。

私たちのキャリアに対する意識が変われば、
彼・彼女らも企業のニーズに応えるためには、必然的に私たちのニーズにも
応えざるを得なくなることでしょう。

過去の経歴だけでマッチングするくらいなら、
AIのほうがよっぽどこれからは信頼できるようになります。
転職エージェントが人でなきゃならない理由を突き詰めていけば、
私のようにAIでは探しきれない新しいペルソナに見合ったキャリアを
共に探してくれるパートナー、まだ可能性でしかないペルソナを
先駆けて承認してくれるような存在であるべきでしょう。

理想の転職エージェント

転職エージェントたちとのやり取りには、
ほとほと愛想をつかされましたが、
その中でも一人だけ、素晴らしい理想的なエージェントが
いらっしゃいましたのでご紹介します。

どちらの転職サイトからだったか忘れてしまいましたが、
Axis Consultingというコンサル系の仕事紹介に強い会社の方です。
仮名でK氏とします。K氏からのスカウトメールがきっかけでお会いしました。
こちらのエージェントを通して最終的に転職することはできませんでしたが、
今でも連絡をとらせていただいています。

K氏のどこが素晴らしかったかというと、
働きながら転職活動している私の時間などを
ご考慮いただいたのはもちろんのこと、
オフィスでの面談、2名体制でまずはしっかり
聴き取りしていただいたことなどが、
他のエージェントとは違いました。

事前リサーチをしてくれた

そしてとくに驚いたのは、
私の前著「40からのMBA留学」
買って読んでいただいていたことです。

非常に嬉しかったです。

このようなことは、後にも先にもありませんでした。
私がMBAを志し、取得するまでの体験談を綴った本ですから、
読めば30分面談するよりも多くの情報が得られるはずなのに、
誰も気付かないというのはもったいない話です。
(検索すればちゃんと出てきます)

営業のハウツー本を読んでいても、
相手企業のホームページやその企業の経営者がSNSで
どのような発言をしているかを事前に調べておくのは、
今や「エチケットだ」というくらいですから、
企業の採用側ばかり見ていないで、
実際の売り上げに貢献する私たち転職希望者のほうに
しっかりと寄り添ってもらいたいところです。

さすがコンサルティング会社と関係が深い企業の方だけあって、
こういった顧客との信頼関係を築くためのノウハウを学んでいるのでしょう。
面談していても私がなぜ建築から人材開発へとキャリアシフトしたいかを
よく理解していただき、話しやすかったです。

私の新しいペルソナを理解したうえで

「人材開発や組織変革のコンサルティングに最初から絞り込まなくても、
企業の経営全般における課題を解決していく中で組織開発という視点での
コンサルも出てくるのではないでしょうか」

というアドバイスをK氏からいただき、
この言葉が自分にとっては大きな気づきを与えてくれる一言として
後の転職活動にも大きく影響を与えました。

大きなチェンジよりスモールWIN

この連載を通してご紹介しているイバラ教授のワーキング・アイデンティティでも、
古いペルソナから新しいペルソナへのジャンプで多くが失敗していると言います。
古いキャリアと新しいキャリアのギャップが思った以上に深いからです。

ここで重要なのは、古いペルソナを無視してはいけないということです。
やはり今まで培ってきた専門的な知識や経験は、transferable skill(変換可能なスキル)
として利用可能だということを意識する必要があります。

「イノベーションのDNA」の著者クリステンセンもT字型人材、
すなわち縦軸に専門性を持ち、横軸に広い視野(MBA的なビジネスの全体像)をもった
人がイノベーターや起業家に多く、固定観念にとらわれない柔軟な発想で仕事ができる人々なのだそうです。

何かしら古いペルソナと折り合いをつけていくようなキャリアシフトが
現実では上手くいく確率が高いということで、
K氏が勧めてくれた「建築系企業に特化したコンサルティングファーム」などは、
私にとってまさにこのT字型モデルの典型であり、
イバラ教授のいう「大きなチェンジよりスモールWIN」
実践できるようなポジションであったので、
ドンピシャなアドバイスだったと思います。

K氏自身はここまで私の思考プロセスは知らなかったでしょうが、
前回、良い転職エージェントの条件でもお話ししたように、
「選択肢の幅を広げてくれるアドバイス」をしてくれた唯一のエージェントです。

「上司になる方が年下なので、あなたの年齢では(年上すぎて)ちょっと難しいかも」
とか、平気でエイジズム(年齢差別)を持ち出すエージェントもいますので、
ぜひエージェント選びは、慎重に行っていただきたいとおもいます。

生涯のキャリアパートナー

私が一押しの転職エージェント、
アクシス・コンサルティングさんは、
面談前のフォローや面談後のフォローもしっかりやってくれます。
不採用であってもその理由を一緒に分析してくれたりもします。

そのほかにも、自己啓発のためのセミナーや
異業種コンサルティング交流会など興味深いイベントを行っていたり、
メルマガで有益な情報を提供してくれたり、
頼れるパートナーになってくれます。

ホームページでも「生涯のキャリアパートナー」と謳っていますが、
私はこれが転職エージェントの存在意義だとおもうので、とても共感しています。
下手な転職サイトに登録するより、MBAホルダーなら
こちらの転職エージェントに直接御世話になることをおススメします。

最後に、唯一残念に思うのが、
私自身がもう少しK氏に対してアピールしていれば、
継続的にお仕事をご紹介いただけたのかなというところです。

3社ほど面談して、次に進めなかったので、
少しモチベーションが下がり、しばらく連絡をしませんでした。
今思えば、まだ足掻き足りなかったのかなとおもうところです。




2017年11月18日土曜日

良い転職エージェントを選ぶための3つのポイント

一般向け転職サイトに登録

会員制プレミア転職サイトは、
私のような「普通のサラリーマン」のキャリアシフトには
向いていないとわかったところで、
次に登録したのは、リクナビネクストとエン転職でした。

リクナビネクストでは、前職の企業に就職するときにお世話になったのと、
エン転職は、(退会した)ミドルの転職からこちらのサイトに登録しなければ、
紹介してもらえない仕事に応募したため仕方なく登録しました。

私の場合、資格登録のところで一級建築士は国の資格のため、
登録項目に出てくるのですが、面白いのは「MBA」というのも
ちゃんと資格登録の項目として存在するところです。
大学院卒ということですので、学歴のところで書けばいいと思うのですが、
他の国家資格と並んで「MBA」という項目があるのは、
やはり採用側から検索するときの条件として取り上げたい内容なのでしょう。
ということで、転職サイトに登録する場合も、MBA取得というのは
他の転職希望者と差別化するための「肩書き」となります。

やはりMBAを知らないのか…

ただ、これらの資格をみてくるスカウトメールが的外れなことも多く、
やはり採用側のMBAに対する知識があまりないようだということもよくわかりました。

あるときは、「貴方のご経験や資格から、このお仕事がふさわしいのではないかと…」
と勧められ、「タクシー運転手」のスカウトメールをもらったこともあります。

タクシー運転手も変な客がいたりして過酷な仕事なのか、
なり手がいなくて切羽詰まっているのはわかるような気がしますが、
タクシー業界では名の知れた企業が、
このような数打ちゃ当たる的スカウトメールを送るのも、
自社のブランド好感度を下げていることだと気付かないのでしょうか。

採用するという行為だけみれば、
いい人材に来てもらうというのが最終目的ですが、
採用しない人たちにも企業のことを知ってもらうチャンスなのですから、
もう少し真剣に見せ方、伝え方を考えていただきたいものです。



逆歴女史

この前は、年配の失礼なエージェントの話をしましたが、
またここで、面白い転職エージェントをご紹介します。
こちらは、エン転職で、エージェントを通さないと応募できない仕事に
応募してみたときのことです。
やはり人材開発系のお仕事に挑戦したかったので、
今回はメンタルヘルスチェックサービスを提供する会社への
応募だったのですが、今回はちゃんと職務経歴書をよく読んでくれて、
紹介したいので面談をしたいと返事がきました。

20代後半か30代前半の女性エージェント(仮にAさんとします)だったのですが、
面談の日にちもこちらが平日忙しいことも考慮していただき、
土曜日に会っていただけることになりました。
前回のエージェントと違い、
カフェの場所も落ち着いたところをチョイスしていただき、
いろいろ配慮してくれているな、というのが第一印象でした。

お会いして今までの経歴やなぜ今回全く新しいキャリアを目指したいかを
聴いていただいたのはよかったのですが、
相手の会社に出す前にということでこんなことを言われました。

「今回の企業では、職務経歴書は、時系列、
すなわち過去の経験から順番に書くスタイル「逆歴」が好まれますので、
そちらに書き換えていただけますでしょうか。」

「はい?そうしないと面談してもらえないくらいなら、
面談いただかなくても結構ですけど。
だって、逆歴だろうが、順歴(直近の経験から書く)が
私の経歴は変わりがないでしょう?」と私。

「でも、採用されたいのですよね」とAさん。

最後の言葉にカチンときました。
結局、彼女の言う通りのスタイルに職務経歴書を書き換えないと
先方には出してもらえないとのこと。
今まで4社ほど転職してきましたが、
そんなこと初めて言われたので、びっくりしました。

採用する側の些細なニーズに合わせることで差別化したいと思っているのでしょうが、
正直言って、そんなことで面談の扉を閉ざすような企業なら
こっちから願い下げたと思ってしまい、テンションが下がってしまったのです。

Aさんとしては、ちょっとしたことで跳ねられてしまうより、
取り得るベストを尽くすべきだということでアドバイスしてくれたのでしょうが、
そこまで媚びを売る努力をする必要性が感じられなかったので、
今回の応募の件は少し保留にして考えさせていただきたいと伝え、
お会いいただいたことに対してお礼を言って、カフェを去りました。

試しに同じ企業にアプライする

実はこの後、同じ企業の同じポジションの募集が、
その企業のホームページに載っていたので、
試しに直接応募してみました。

もちろん逆歴ではなく、通常(順歴)スタイルで。
結果は、合格。やはり面談いただけることになりました。
面談では、和やかな雰囲気でじっくり聴いてくれたのですが、
その後二次面接には進めませんでした。

「自分が営業していて難しいと感じることは何か、
そして、それに対してどう解決しますか」という質問に、
具体的なイメージができず、
歯切れが悪い回答しかできなかったからだとおもっています。

BtoBの営業経験は、技術フォローとしてしか行っていなかったので、
直接、決裁権者とやり取りするという今回のポジションには、
経験不足とみられてしまったようです。

良い転職エージェントの条件

おもうに今回の転職エージェントも、
私のニーズを全く満たしていません。
企業側からのインセンティブが強すぎる今のシステムがある以上、
そうなってしまうのかもしれませんが、
そのおかげで、私たちのチャンスが彼・彼女らの
偏った見方で限定されているとしたら、勿体ない気がします。
適材適所で人材をマッチングするためのゲートキーパーなのでしょうが、
企業に対しても逸材を取るためのチャンスを閉ざされている可能性があることを
もっと認識するべきだと考えます。

これからキャリアシフトを考える方々にとっては、
良いエージェントに巡り合うことも大切です。
そこで、良いエージェントを見分ける3つのポイントをシェアします。

1)面談の時間や場所を決めるときに、ちゃんとこちらの都合を考慮してくれる。

2)自分のキャリアを限定するようなネガティブ発言で従わせる俺流エージェントはNG。
  逆に、選択肢を広げてくれる提案ができるエージェントを探す。

3)面談の場所選びで、プライバシー確保をちゃんと考慮してくれる。

こちらは、補足ですが、最近カフェで面談していることが
私以外でも多く見受けられます。
隣に人がいるなかで自分の経歴やこれからのキャリアについて語るのは
落ち着かないものです。
カフェで話し合うにしても、最低限のプライバシー確保に
気遣いできるエージェントを選びましょう。
(これがなかなかいらっしゃらないので、エージェントの方にマストだと言いたい!)



中立な第三者の支援も

そして最後に、真のキャリアシフトを目指す場合には、
転職エージェント以外の中立な立場で支援できる
コーチングを利用することをおススメします。

コーチングでは、「答えは全て自分のなかにある」というのが
前提ですので、偏った価値観や相手の一面しか見ていない
他人としてのアドバイスは一切しません。
相手のお話をよく聴いて、それに対して更に問いかけ、思いや感情を
言葉にしていくことで気づきを得るという作業をお手伝いするのです。
このような自分らしらを取り戻すキャリアについてのコーチングに
ご興味があれば、右コラムのメールフォームから私宛にご連絡いただく
というのもオプションのひとつかもしれません。





2017年11月12日日曜日

キャリアシフトで重要な職務経歴書の作成ポイント

自分なりの物語

さっそくいくつかの転職サイトに登録しようと、
まず初めに登録したのは、ビズリーチとミドルの転職でした。
今まで20年間住宅産業に従事してきたのですが、
今回は自分の思い描く新しいペルソナ(Possible Self)に正直になろうとおもい、
まず、コーチングのスキルをのばせる仕事ということで、
人材開発、キャリアアップ研修などを行う企業への職をターゲットにして、
職務経歴書を書き直しました。

ここでもイバラ教授のアドバイスが役に立ちます。
(前記事参照)

「自分なりの物語をつくろう」です。

結局、今までのペルソナは、施工から管理、設計、性能評価や品質検査を
経験してきた「住宅業界」のマルチプレヤー(自分でいうのも何ですが
というイメージです。
それを今度は組織のなかで働く全ての人たちが、
自分らしい働き方ができるようなお手伝いができる
コンサル的なイメージへ変換したいわけです。

前者のペルソナは、経験や実績もありますし、資格もあるので、
それを言葉にすれば初対面の転職エージェントや採用担当者にもすぐ伝わります。
前述したように、人は知り合いでも見ず知らずの相手に対しても一貫性を求めます。
彼は、優しい人だから介護の仕事をしているとか、
彼女は人と接するのが得意だから営業の仕事ですとか。

でも実際は、得意とか、好きだとか、関心があるからといって
それを生業としているわけでもないですし、
たまたまとか、私のように別の理由で大学卒業後に
今の職種に飛び込んだ人たちもいらっしゃるかとおもいます。

ですから、人はAだからBの仕事をしている、できると
単純に決めつけることはできないのですが、
限られた時間と費用で採用する側としては、
過去の仕事と今募集しているポジションに一貫性がある、
すなわち即戦力になりそうな人材を取りたいのが現状でしょう。

だから、今の仕事がやりたいことではないと気づいたときに、
今までのペルソナを引き剥がして、全く新しいペルソナを作り出そうとしても、
そこに一貫性や説得力になる経験がないかぎり、
まわりが認めてくれないのです。

そこで重要になってくるのが、「自分なりの物語」です。


越境可能なソフトスキル

私自身も大きなキャリアシフトを何回か繰り返しています。
大工個人で工務店経営サラリーマンとして施工管理設計関連評価、点検技術者教育と同じスペースではありますが、役割や仕事の専門性は異なります。
ここでは、住宅というキーワードが一貫性としてあるので、
比較的相手に伝わりやすいですが、今回自分がやりたいとおもっている仕事は、
人事系の内容となります。

ですので、今までの仕事の中で、
これからやりたい仕事にうまく繋がっていくようなストーリーを
自分の中で見つけていく作業をまず最初に行いました。

自分が今まで経験してきた仕事の中から、
産業を超えて使えそうなスキルを考えてみると
次のようなことがあります。

・社内に埋もれたデータを分析して、改善や新しい仕組みを作り出す能力
・既存顧客から新しいニーズを掘り起こして、適切なソリューションを提案する営業力
・座学研修とOJTを上手く連携させて、顧客対応力を向上させるための教育デザイン力

住宅とか、建築というコンテキスト(文脈)を除いても、
これだけの越境可能なソフトスキルが出てきたのには、私自身も驚きました。

逆にいうと、普通のサラリーマンとして組織の中で考えながら一つひとつの仕事をしてきたからこそ、一社員としてもっとできることがあるだろう、
どういう環境ならもっと楽しくクリエイティブに自分らしい仕事ができるだろうかと
考えてきたからこそ、私たち40代には越境可能なスキルがたくさんあります。

MBAを学ぶ過程でこれらに気付き、ビジネスを包括的にみることで、
コーチングに出会ったのだということがわかります。

住宅の専門性が高い仕事から、人材開発系の仕事をしたいとおもったのは、
思いつきでも、何もないところから湧いて出てきたわけでもありません。

いくつもある自分の興味や関心ごとの蕾が開花して、
やりたいことの一つとして浮かび上がってきたのです。
このような思考の流れ、私自身の全てを一瞬でわかってもらうのは無理なことなので、
簡単に伝えられるような「物語」をつくり、まわりの人々に語っていくことで、
新しいペルソナの承認力を強化していくことが、非常に重要なポイントとなります。


同時に、古いペルソナから新しいペルソナへの道のりが
つながっているという「自分なりのストーリー」として言葉にすることで、
自分自身の納得感を醸成し、再認識する機会にもなります。




2017年11月10日金曜日

企業の虚構と個としてのキャリア

人間の大規模な協力体制は何であれ 、人々の集合的想像の中にのみ存在する
共通の神話に根差している 。
ユヴァル・ノア・ハラリ. (2016). 
企業というフィクションにどう向き合うか

オバマ前大統領のオススメの著書ということで、
我々ホモ・サピエンスの約7万年の歴史を紐解いた
壮大な物語の中で、なぜ企業という組織が成り立っているのか
という話が面白かったので、初めにご紹介します。

それは、認知革命として、現実には存在しない絆や神などを
想像する力を手にしたからだということで、
一番わかりやすいのは、お金です。
単なる紙切れ1枚ですが、相手も価値があると認識していれば、
物やサービスを交換する媒介になります。
それと同じで、企業もビジョンやミッションという
神話を信じる社員たちによって協力体制ができているといえます。

ですが、共同体意識とは、現実のものではないので、
言ってみれば虚構(フィクション)ですね、というのがオチになります。
その虚構を信じるものが、社員なのでしょうし、
少しでも疑ってしまえば、離れるしかないというのも
こうやって人類を俯瞰した見方をすれば、
至極当たり前のことなのかもしれません。

陳腐化した神話を信じ続けたい人と新しい神話を創造したい人たちが
せめぎあっているのが、今の時代です。
認知を超えたメタ認知革命が、個々人の人生のあり方、幸福感に
焦点を当て始めているので、その大きな部分であるキャリアでも、
企業がつくりあげた虚構とどう折り合いをつけていくかが、
無視できない課題となっているではないでしょうか。

大きなギャップ

MBA留学から帰ってきて、
復職してから3ヶ月でもともといた会社の神話を見限って、
転職活動を始めたわけですが、
ここであらたな壁にぶち当たりました。

私としては、今までの古い自己像を引きずった仕事に
魅力を感じないということがやってみてよくわかったのですが、
それなら何がやりたいのかと言った時に、
明確な答えが出せないところで焦りを感じました。

オーストラリアで出会ったビジネスコーチングを専門としてやってゆきたい。
そう思っても、まわりのネットワークも経験も何もないわけですから、
じゃあ会社を辞めて、コーチングをやりますというのは、
リスクが高すぎるのかなと感じていました。

ここで、立派な起業家たちは、武勇伝を語るのでしょうが、
私たち「普通のサラリーマン」としては、
「はい、はい、よかったね」でしょうし、
真似できない人たちの話を聴いても、あまり参考にならない気がします。

今までお話ししてきたように、新しい自己像を確立するためのリソース、
すなわちそれを支援してくれるような人間関係、コミュニティを築けてないうちから、
自分一人だけが新しい自己像、新しいキャリアにシフトしたくても、
まわりがそれを簡単には認めてくれません。

まさにイバラ教授が指摘するOld Self とPossible selfの狭間で
右往左往しているような心理状態でした。

仕事以外の多様なネットワーキング

それでも彼女のアドバイス通りにとりあえずやってみるかということで、
特に「仕事だけに焦点をあてない。新しいキャリアを支えてくれる人間関係もつくる」
とか「自分なりの物語をつくろう(なぜ変わるのかの動機を明らかにする)」などを
意識するようにしました。

実は、新しいキャリアを支えてくれる人間関係もつくろうというコンセプトは、
MBA留学をする前から別のかたちで意識していました。

ドラッカーが、これからは2足でも、3足でもわらじを履いて、
自分の仕事以外のところでも社会とのかかわりを持つことが
キャリアだといっていたので、
仕事以外で関心のある自然エネルギーや省エネについての集まりや活動に
積極的に参加していましたし、地域の新しい産業づくりを有志で行っている団体に
所属したりもしていました。

もともとキャリアの語源は、四輪車とか車の道からきているので、
一輪ではなく、二輪、三輪と走る車なら車輪が多い方が安定するではないか
ということです。
多様なネットワークというのは、
ライフシフトの著者グラットン教授も変革資産としてあげていますが、
私の転職にも繋がる話なので、しっかりとどのように影響していったかを
後ほどシェアできればとおもいます。

あらためて、イバラ教授のアドバイス通り、
新しい自己(Possible Self)の一つであるコーチングを中心としたネットワークを
作りたいと思い、国際コーチング連盟の日本支部に早速登録して、
会議に出席したり、ボランティア募集に応募したり、
仕事とは別にプライベートでの活動をしました。

一番は、自分自身のコーチング経験を増やしたいと思い、
どなたか関心のある方を探したかったのですが、
日本に帰ると、まわりが留学前の私との付き合いが長いせいか、
新しいキャリアを売り込む隙がないように感じてしまい、
意欲が削がれてしまいました。

オーストラリアでは、すでにクライアント2名にセッションを
受けていただいていたのに、日本に帰ってからはどうしたらいいのだろうと
怖気付いてしまいました。やはり過去の自己像、
今のキャリアに引っ張られてしまったのだとおもいます。

スモールステップは踏み出したものの、スモールWINもない状況で、
それでも何かしらのシフトはしたかったので、
いくつかの転職サイトに登録することにしました。

この転職サイトより出会うことになるキャリアエージェントたちの
愉快な面々については、いろいろな失敗談も踏まえて、
次の章でお話ししたいとおもいます。


参考文献
ユヴァル・ノア・ハラリ. (2016). 年, 柴田裕之 (訳),『サピエンス全史~ 文明の構造と人類の幸福~』.

2017年10月30日月曜日

キャリアシフトでは義理や体裁を考えてはいけない

かつて人生には目指すべきモデルがあり、自然と人生設計ができていた。
今は、何をやったら「合格」「100点」かわからない中で、人生100年、自分の生き方を自分で決断しなければならない。 
経済産業省 次官・若手プロジェクト・ペーパーより


復職について正直な感想

今思えば…という話で現時点ではあまり生産的ではないのは承知していますが、
こういう結末なら、留学前に辞めてくればよかったとさえ思います。
恐らく、これからMBAを目指す方もいらっしゃるかと思うので、
今いる会社に残るというオプションを真剣に考えている方には、
その後のキャリアがどのようになっていくか、また、
まわりの反応などを参考にしていただければと思い、
正直な気持ちを書いてまいります。

私の今の正直な気持ちは、帰国後の貴重な1年が勿体なかったなと思っています。
会社のなかでMBA制度がしっかり構築されていて、
帰国後のフォローアップ体制や先輩の活躍など実例があるような会社であれば、
残る価値はあると思いますが、私が在籍していた企業のように
漠然と私費留学は認めるが、その後のフォロー体制を全く描けていない所は、
引き留めにあっても、情とか義理に流されず、
残らずにきっぱりとオサラバしたほうが、お互いのためになるでしょう。

日本特有のキャリア志向

「情とか義理を捨ててさっさと転職なんて、
そんな冷たい虫のいい話があるわけない。」

なんて日本では言われてしまいそうですが、
それでは逆に、今の仕事が10年後、20年後まで続けてあるという保証が
どこにありますか?と問いたいとおもいます。

シャープだって、東芝だって、優秀な企業でしたが、
まわりの変化に飲まれて危うい状況です。
これからは、収入の安心だとか安定だとかを企業に求めていく時代ではありません。
一人ひとりが、自分自身の選択によって、得意なことをキャリアとして積み上げて、
それを提供していく。
提供するスキルやコンテンツが寂れてしまわないよう
成長できる場を自ら選択するのであって、
決して企業に選ばれるのを待っているだけではありません。
よく半年、1年で転職しようとすると
なるべく長く残ってもらいたい企業には見栄えが悪くなるから
と思って我慢している方がまだまだ多いようですが、
自分自身が最大限活かされて、成長できる場を探しているのですから、
期間などまったく関係ありません。

世界のキャリア志向と幸福度

このようなキャリアに対する感覚は、
欧米では普通のことだと、オーストラリアに行って特に感じました。
オーストラリアでの経験では、平均勤続年数が2年程度なので、
1、2年で仕事先を変えるのはざらでした。

例えば私がシドニーで仲良くさせてもらっていたポーランド人のM氏は、
私が妻と一緒にシドニーへ来た2014年から現在(2017年)の3年間で
3回転職しています。
私の肌感覚だけでは、説得力がないので少し調べてみました。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の国際労働比較データによると、
オーストラリアで10年以上勤続している労働者が、約23%しかおらず、
10年未満が77%でそのうち、3年未満が40.5%もいます。

一方、日本はと言いますと、勤続10年以上、45.1%で
勤続3年未満は、22.7%と約半分です。

そんなにころころ仕事を変えなければならない状況では、
安定しないしプレッシャーを感じているから幸せではないのではないか
という疑問もわくかと思いますが、その逆です。
国連のSDSNのWorld Happiness Report(2017年)による幸福度順位で
オーストラリアは、福祉国家の北欧諸国(ノルウェー、デンマーク、フィンランドetc)
に並び、8位に位置しています。

一方で日本は、何番目かご存知でしょうか?

51位です(笑)。

各国の平均継続年数の比較で行くと、
下のようになりますが、( )内が、幸福度の順位です。


  • ノルウェー 9.0年(幸福度順位1位)
  • デンマーク 7.4年(幸福度順位2位)
  • アメリカ  4.2年(幸福度順位14位)
  • 日本    12.1年(幸福度順位51位)


オーストラリアの平均勤続年数がデータとしてないので比較できませんが、
ご覧のように勤続年数が長いことが豊かな人生に貢献しているという認識は
少し外れているのではないかとおもうのです。

これからのキャリアシフトを考える

ここでもう一つ非常に興味深いデータをお見せします。
これは、経済産業省の若手官僚らがまとめた資料として
かなり賛否両論あったペーパーからの抜粋ですが、
イラスト1にあるように「正社員になり定年まで勤めあげる」
という生き方をする男性は、1950年生まれで34%のところ、
1980年生まれの方々は27%に減っています。

イラスト1
出典:2017 経済産業省, 不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~, p11.


左側が女性の生き方を結婚と家族の視点で描いていますが、
こちらも「結婚して、出産して、添い遂げる」という
生き方をする若手(1980年生まれをセグメントとして)が
減っているという内容です。少し間接的になりますが、
多様な働き方をする女性も圧倒的に増えているということだとおもいます。

ここで見ていただくとわかる通り、兼業、副業や社外に出る人、
非正規雇用、あるいは主夫(無職層)という選択肢もあるかとおもいます。
そんな多様な働き方をする人たちが日本国内でも増えているので、
若手官僚の皆さんいわく、
「高度経済成長の社会を前提につくられたシステム=昭和の人生すごろく、
すなわち、“サラリーマンと専業主婦で定年後は年金暮らし”では、
このような多種多様な働き方をする人々の100年人生を豊かにすることは
できないのではないか」ということです。

私たちは、一人ひとりが自覚をもって自分自身のキャリアについて
国任せ、社会任せ、企業任せにせず、これから来たる新しい社会の在り方を見据えつつ、
自らの選択肢を広げていかねばならないのではないでしょうか。



参考文献

 経済産業省  (2017).  "不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~".
 JILPT (2017).  データブック国際労働比較2017, p123.  
   Helliwell, J., Layard, R., & Sachs, J. (2017). World Happiness Report 2017, New York: Sustainable
   Development Solutions Network.


2017年10月6日金曜日

100年人生のキャリアをプランする

先日NHKのニュース番組で、高齢者の定義が65歳から75歳に
繰り上げる動きがあるとの報道がありました。
日本老年学会発表に寄ると、
「身体の働きや知的能力が5~10歳若返っている」という話。

ハーバードビジネススクールのLinda GrattonとAndrew Scott(2016)によると、
100年前に比べ寿命が格段に伸びており、若い世代ほど、
長生きする確率が高くなるため、今の私たちの両親世代(60代、70代)の
寿命を前提に人生設計を考えると、あまりうまくいかないと警鐘をならしています。

これからは珍しくない100歳人生

Lindaらのリサーチによると、
日本で2007年に生まれた子ども(2017年現在、10歳)の50%が
107歳まで生き延びる可能性があるそうです。
5割といえば、個人的には50/50でどちらともいえない
かもしれませんが、日本全体で考えれば、
2007年生まれの半数は、この歳まで生きているということになります。

グラフ1が示す通り、他の先進国と比べると日本はダントツで長寿の国のようです。












グラフ1:Gratton, L. & Scott, A. (2016)

幼児死亡率の減少、生活習慣病の予防、高齢者に起こりやすい病気の克服など
医学の進歩や食習慣、衛生環境の変化によって、1840年から10年ごとに
寿命が3年弱伸び続けているそうです(Gratton, L. & Scott, A.  2016, p.17)。

先ほどの生き延びる確率50%の年齢107歳をベースに考えると、
下の表のように現在(2017年時点)60歳の方も5割の方が92歳まで生きている
ということになります。これは、現在の男性・女性両方の
平均寿命80歳と87歳を超えています。

◆50%の確率で生きる年齢

2007年生(10歳) 107歳
1997年生(20歳) 104歳
1987年生(30歳) 101歳
1977年生(40歳) 98歳
1967年生(50歳) 95歳
1957年生(60歳) 92歳

100年人生のキャリア・プラン

長生きすると老後お金が足りなくなるという話は以前から話題になっているので
さほど新しいことではありませんが、
彼女らの議論が興味深いのは、100年人生のライフプランは、
現在我々が社会のシステムとして取り入れている
教育→仕事→リタイアメントという3ステージのパラダイムでは、
学び方、働き方もまた現状の考え方では立ち行かなくなるというところです。

100年人生を現在の3ステージの人生設計で考えると、グラフ2ような表になります。

グラフ2

65歳でリタイアして、残りの35年を無収入で暮らすためには、
年金として退職時年収の半分程度を見込んで毎年貯金するとすると、
毎年年収の25%を貯蓄にまわさなければなりません。

そこで、仕事の期間を10年~15年伸ばして、
生涯の収入を増やすというオプションが
現実的な方法になってくるのですが、
ただ単に仕事の期間が43年から53年に延ばせば良い
ということではないというのが、Lindaらの議論です。

20年後のキャリアをとりまく風景

現在、ビジネス環境は激しく変化しており、テクノロジーの発展により
今存在する仕事そのものがロボットやAIにとって替わる時代に差し掛かっています。
Frey, C.B. & Osborne, M.A. (2017)によると、今存在する仕事の60%が
20年後にはなくなる可能性があると予測しています。

職種によりますが、同じ仕事、職業を選択して一生涯その仕事に従事すれば
安定した収入が見込めるという時代ではなくなってきたということです。

同じ仕事、職業に就いていたとしても、10年前、20年前の知識や経験の延長では
競争に打ち勝てない環境になってきたのは確かです。ソニーのウォークマンが、
PCメーカーのアップルに音楽配信の流通そのものを変革されて廃れていったことや、
カーシェアリングのアプリUberがタクシー業界を脅かしていることも、
同じような仕事を昔と同じようにやっていれば安泰という時代ではないことを
物語っているのではないでしょうか。

では、このような変化の激しい100年人生を
どのように設計すればいいのでしょうか。

お金や健康はもちろん充実した人生には欠かせませんが、
Lindaらが焦点を当てているのは、お金や不動産など目に見える資産ではなく
Intangible Assetsといわれる「目に見えない資産」をいかに上手にマネジメントして、
楽しく、生き甲斐を感じながら長生きするかということです。

それでは、「目に見えない資産」とはどのようなことでしょうか。
次回は、「目に見えない資産」について具体的にご紹介いたします。


参考文献

Gratton, L. & Scott, A. (2016), The 100-Year Life: Living and working in an age of longevity, Bloomsbury Publishing.

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