2014年11月25日火曜日

やさしい会計学の話:ABC分析とは?


ABC分析とは?

不得意なアカウンティングの授業で
実践でもつかえるコンセプトとして面白いなとおもったもう一つの内容は、ABC分析だ。

ABC分析とは、Activity based costing(アクティビティ・ベース・コスティング)の略なのだが、
いくつもの製品やサービスがあるなかで、ひとつの製品やサービスのコストを考えるときには
通常、直接費、間接費というコスト分類からコストを計算する。

ABC分析では、アクテビティ、すなわち、
製品やサービスが顧客に提供されるまでのすべての活動に焦点をあてて、
それぞれの活動におけるコストをはじき出す手法である。


全部原価計算法

なじみの深い建設業で例えれば…

A工務店では、ある期間で新築1500万円の契約とリフォーム1500万円の契約があったとする。
それぞれ直接費と間接費でコストを分けるとすれば、直接費は、建設に必要な資材や下請け業者への発注費用が主になるだろう。

間接費用は、会社の社員を含む一般管理費になる。話を簡単にするために、直接費がそれぞれ1000万掛かり、間接費用としては社員を含む会社全体の運営にかかる費用として、800万掛かったとする。

この場合、間接費はその期間にかかった会社全体の費用として財務会計ではプールされるので、
工事別に費用を振り分けようとすると、工事費総額の割合や面積などて振り分けることになる。

それぞれ工事の内容は違うが、今回の場合、総額が同じなので、800万の間接費は
それぞれに1/2の400万づつ振り分けることになる。

このようにすべての間接費(器具備品、人件費、オフィスリース料など)を製品、サービスに
全部振り分けることを全部原価計算(Absorption Costing)といって、
工場などの製品生産などに使われてきた伝統的な手法である。

一連の内容を表にすると次のようになる。

A工務店(全部原価計算)新築リフォーム
契約金額1,500万1,500万
直接費-1,000万-1,000万
間接費-400万-400万
コスト合計-1,400万-1,400万



営業利益100万100万



上記のように間接費を総額の比で分配すると、営業利益がともに100万と同じように算出される。

新築を請け負っても、リフォームを請け負っても、どちらでも同じ儲けが期待できるなら、
今後は高耐久住宅の普及にともなってリフォーム物件が増える傾向にあることから、
リフォームをたくさん受注する戦略をとって利益を増やそうという決断もできるだろう。

今回話を単純化するために、新築もリフォームも一物件づつの比較をしたにすぎないが、

実は、リフォーム物件のほうが、新築物件に比べ施主との打ち合わせ、
施工管理や下請け業者との調整など、間接費として計上している社員の労働時間はリフォームのほうが格段にかかる。



ABC分析では?

そこでABC分析では、単に間接費として比率分配していたこれらの費用をそれぞれの活動に伴う費用としてブレークダウンして正確なコストを割り出す努力をする。

A工務店での例を考えると、営業社員の打ち合わせから契約までの折衝時間、
積算部の見積もり作成・変更に伴う時間、現場監督の打ち合わせ、
現場調整などに費やした労働時間などを算出する。

そうすると次のような違いが出るかもしれない。

A工務店(ABC分析)新築リフォーム
契約金額1,500万1,500万
直接費-1,000万-1,000万
営業活動費(営業部人件費など)-60万-80万
積算製図(積算部人件費など)-50万-70万
施工管理費(施工部人件費など)-145万-195万
その他の会社運営費--100万-100万
コスト合計-1,355万-1,445万



営業利益145万55万



実際の活動ベースの原価計算をしたところ、新築では145万利益が出ている
リフォームでは、55万しか利益が出ていないことがわかる。

リフォーム受注を増やすということは、社員のリフォームに費やす時間が増えるということなので、
現在の人員体制では対応できない可能性も出てくるかもしれない。

特に内容の異なる製品やサービス提供を同時進行で行う場合、
直接原価以外の間接費用をそれぞれの商品にヒモづけして、
活動ごとのコストとして正確に割り出さないと、
誤った意思決定を行う可能性がある。

A工務店の例で言えば、社員を遊ばせておくよりも少しでも利益が出ればよいと思って、
上記と同じ1500万のリフォームの仕事を1420万で受注してしまうと、
全部原価計算では、20万の利益がABC分析では、25万の赤字になる。


見えないコストを見える化する

ひとつの製品やサービスの原価を正確に抑えることは、
どこまで価格を割り引くことができるかなど
競合他社との価格競争においても優位に立てる可能性が大きい。

対外的な決算書や税金のための財務会計では、
すべての販管費、一般管理費を一緒くたに統合してしまうので、

それぞれの商品ごとのコストを割り出すときに個数や売上高の比によってこれらの間接費を
分配する方法しかなくなってしまうが、これをやってしまうとそれぞれの活動で実際に費やす労働時間などの濃淡がわからなくなってしまう。

特に複雑なサービスを提供する場合、それぞれの活動が多岐にわたり
なかなか一つのサービスにたいする原価が割り出せない場合もあると思うが、

ひとつのサービスに対する会社全体のプロセスは必ず存在するわけで、
それらの活動を測る指標(稼働時間、面接時間、人数、件数、枚数、データ量など)を設定すれば
コストを見える化することができる。

コストを見える化することで、改善すべき活動やプロセスは何かも見えるようになる。

売上や利益が出ているときはいいが、市場が変化して利益が出なくなってきた時に初めて
なぜ利益がでないのかを考えていては遅い。

なぜ利益が出るのかを管理会計のなかで十分把握することが重要である。