2014年8月8日金曜日

図書館に住んでいる「教授X」?


アパートのネット環境がなかなか整わないので安全なフリーWIFIが使える図書館通いが続いた。


ちょうど住まいから歩いて20分くらいのところにあるので午前中のあいだに家事を済ませ、
昼前に出かけて夕方まで図書館に入りびたり、
帰りがけにスーパーで夕飯の買い物をして買えるのが日課のようになっていた。

Stanton Libraryは、ノースシドニーのビジネス街からちょっと外れた所にある。
入口手前には、全体に芝生が敷き詰められた憩いの広場があり、
煉瓦タイルの歩道とその脇には装飾された噴水がある。



天気のいい日には、ベビーカーを引きながら若いお母さんたちが
小さい子どもたちと芝の上で戯れたり、昼になれば近くで働くビジネスマンたちが
それぞれランチボックスを手にやってくる。

図書館のなかは、日本とは違い飲み物、スナックなど袋入りの食べ物なら持ち込みOK。
書架のあいだには、ゆったりとしたスペースが設けられ、
そこここに学習スペースやイージーチェア、ソファなどが置かれている。

毎日開館しているので、休みの日を気にする必要もない。
いつ来ても年配の男女、学生らしき人たちでにぎわっている。




日本にいるときもたまに県立図書館に行っていたが、
学習室は別でなんだかガツガツとただひたすら勉強するスペースであるだけで、
飲食持ち込みも禁止、決してリラックスできる場所ではなかった。

こちらの図書館は、なんとなく照明も電球色で落ち着ている。
本がまわりにあって好きな時に好きなところで読書を楽しめるようになっている。
近くのカフェでカプチーノをテイクアウトして、それをすすりながら、ソファーで読書するのもよい。


窓際の席は景色が良くて居心地がいいのでいつも人気で空きがない。
たまにそこが空いていると席について、つい時間を忘れて
日が暮れるまで読書やネットサーフィン(またはブログ執筆)を楽しんでしまう。

窓際の席がないと、反対側の壁際に机が3台置いてあるスペースに行く。
そこは、書架から壁で仕切られたちょっとした袋小路になっていて、窓際より寒い。

どこにでも「常連」はいるものである。
そのちょっとした袋小路の奥に短髪白髪の気難しそうなオジサンがいる。
3台ある机のうちのひとつをラップトップ、プリンター、その他何だかわからないガジェットで
占領されているため、その机は誰も利用できない。

なぜ「オジサン」のなかにはこう性格が「濃い」人たちが多いのだろうか?

濃いオジサンで思い出すのは、10年前横浜に住んでいた時のことだ。

横浜そごうのエスカレーターののぼりに乗っていると、
下りのエスカレーターにやけにテカテカのポマードを塗りたぐった
オールバックで革ジャンのオジサンが降りてくるのが見えた。

彼の頭がはっきり見えるところまで近づいてギョッとした。
オールバックは手作りの”かつら”だったのである!
しかも張り子のように紙を張りつけたカツラ!

張りぼてのかつらに黒ペンキが塗ってあったので、
それがポマードのようにテカテカしていたのである。

「今のオジサン見た?」

「あれ自毛じゃなかったよね」と妻。

「紙でつくったのは、あのリーゼント型をやりたかったから?」

「さぁーー…」

あのテカリ具合なら、堂々と自分の禿げ頭を見せたほうが
まわりの人の目に優しいのでは?と思うのだが、
デパートに装着して行くぐらいだから、お気に入りの”ハリボテ”カツラなのだろう。

一回見れば決して忘れないが、
私たち夫婦は2回も彼を目撃するという幸運に恵まれたのである・・・




さて、Stanton Libraryの名物オジサンは、もちろん「張りぼてかつら」はかぶっていないが・・・
going-my-wayという意味では、同じくらい変わっている。

いつもでっかいヘッドフォン(80年代の耳を覆う半卵型の)をしていて、
机の上はガジェットと資料の山で占領され何かを研究しているのか、
物書きのようにも見える。

もし教授だとしたら、生徒たちにエッセイのヘッダーの位置や余白、段落の間隔まで
ミリ単位で指定して、少しでも間違えると「F」をつけて突き返すような人だろう。

彼の近くに行くと、老眼鏡越しにジロッと睨まれるので、
なるべく近づきたくないのだが、なぜか彼の机のちょうど前が最後まで空いているのである。

ある時、他の席がいっぱいで仕方なく彼の前の机に座らなければならない時があった。

席についてなぜそこが不人気なのかがすぐわかった!
机の下にはそれぞれ電源があり、それぞれの人が使えるぐらいのコンセントが設置してある。
そのコンセントがすべてその「教授」に占領されている。

しかも自前の3股コンセントをつけて自分のPCやプリンター、
オーディオ?以外に単三充電池を大量に充電しているではないか!?

(おいおい!電源あるんだから、ここは充電するとこじゃないでしょ!)

と心の中でツッコミを入れながら、こっちも電源がなければ仕事にならない。
黙っては引き下がれないと思い、オジサン1年生の闘志を燃やして「教授」に言った。

「コンセントを一つ使えませんか?」

充電用のコンセントひとつぐらいは譲ってくれるだろうと思っていると
黒縁メガネの奥からジロッと私をみて

「向こうにあるじゃろ?」

教授が顎をしゃくりあげる側をみると確かに
机を挟んで向こう側にコンセントが空いている。

(なんだコイツ…お前はここの住人か!?)

とまた心の中でツッコミをいれながら、
愛想笑いをしてすごすごと向こうの電源を拝借した。
数分が経ち、自分のPCでネット検索やメールチェックなどをしていたら
後ろの「教授デスク」から急にガガ、キーンという機械音がするではないか!?

何の音かと思いきや、プリンターが印刷をしている音である。
昔のカーボンテープで印刷するようなキリキリキリというデカい音を立てて
何枚も印刷している。
しかも遅い(汗)

印刷の音がうるさくて自分の作業に集中できない。

(ははーん、これがこの席が空いている理由なんだな…)

教授はデカいヘッドフォンをしながら、
(うるさい機械音の替わりにクラシックを聴いてるのか?)まわりを気にすることなく
ご機嫌で印刷作業をしている。

(やっぱり売れない作家か!)

それ以来、「教授Xのデスク」には近づかないようにしている。